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厚生年金加入+前の会社退職前に病院で受診のおかげで、失業中に毎月18万円受給

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 年金改革の動きが加速している。政府与党は、パートなど非正規雇用で働く人たちの厚生年金の加入要件を、現行の「従業員501人以上」から「従業員101人以上」へ引き下げる案の検討を始めたと、11月27日に全国紙が報じた。

 まだ試案の段階だが、2022年11月に実施する計画で、さらに24年にはその規模を「51人以上」に引き下げるという。社会保険未加入で働き、少ない手取りから自腹で国民年金を負担している人にとっては、保険料半額会社負担で厚生年金に加入できることは朗報といえるのではないだろうか。

 一方で、「どうせ将来、年金などもらえないだろう」と悲観している人にしてみれば、厚生年金に加入して毎月保険料を天引きされるより、国民年金を未納にし続けるほうがいいと思うかもしれない。しかし、厚生年金には、将来の老齢年金だけでなく、もしもの時に障害年金という心強い給付制度があることを知っておきたい。

 大手電機メーカーの請負会社社員として3年半働いていたSさん(仮名、当時29歳)は、近いうちに所属会社がSさんの働いている現場から撤退すると知り、いち早く退職して転職活動をスタートした。ところが、ちょうど景気後退局面に突入したこともあり、なかなか転職先が決まらなかった。

 失業手当をもらえる日数が残り少なくなるとともに、心細くなっていく。職業訓練を申し込もうとしたが、訓練開始時には失業手当の受給期間が過ぎてしまうことが判明。訓練期間中の延長給付はできないとハローワークで言われ、困り果ててしまった。無収入では、職業訓練に通うことはできない。

 そんなSさんを窮地から救ったのは、「障害者手帳」だった。もともと発達障害の兆候があったSさんは前年、精神障害者の認定を受けて障害者手帳を取得していた。折しも、主治医から「障害年金の申請に必要な書類を書いてあげるよ」と言われたこともあり、障害年金を申請することにした。

 国民年金は保険料の免除申請をしており滞納扱いにはなっていないため、申請時点で保険料を払っていなくても大丈夫だ。しかし、国民年金から障害年金を受給するには、2級障害以上と認定されなければならないが、Sさんはそこまで重い障害ではなかった。それにもかかわらず、年金事務所に申請すると、あっさり障害年金を支給されることが決定したのだ。

障害厚生年金を受給できたカラクリ

 いったい、なぜ受給が可能になったのか。

“救世主”となったのは厚生年金だった。非正規雇用で働いていると、「厚生年金なんて無縁の世界だ」と思いがちだ。ところがSさんの場合、かつて数カ月だけ働いた事業所で厚生年金に加入していたことが判明した。

「最初、市役所で調べてもらったところ、私の場合は『障害厚生年金』になるので年金事務所へ行ってくれと言われたんです」

 ここからが大事な部分なのだが、障害認定を受けたときには加入していなくても、その障害の原因となった病気やケガについて初めて医療機関を受診した日、つまり初診日の前日に厚生年金に加入していれば、障害厚生年金の受給資格はあるのだ。

 その結果、主治医が書いてくれた診断書を添えて申請すると、3級障害厚生年金があっさり認められた。厚生年金には1級、2級に加えて、国民年金にはない3級障害年金という、やや緩やかな基準で認定してくれる制度がある。Sさんがもし国民年金で申請していたら、2級までに該当しないとして却下されていたはずだが、厚生年金で申請したことで3級障害厚生年金が支給されることになった。

 Sさんが受給できる3級障害厚生年金の額は、ひと月当たり5万円弱だが、精神障害者の手帳を持ち、なおかつ障害厚生年金も受給していることが、もうひとつ別の制度につながった。ハローワークで「就職困難者」と扱われて、訓練期間中は生活に困らないよう訓練手当が月13万円ほど支給されることになったのだ。

 ちなみに、Sさんより障害が重い2級と認定されれば、障害厚生年金と国民年金の障害基礎年金を合わせて年間100万円前後の給付を受けられる。

 この事例の教訓にして、ぜひ実践したいのが、厚生年金に加入していた会社を退職するときには、必ず医療機関で受診しておくという鉄則である。

 Sさんのケースからもわかるように、特定の病気やケガによる障害が認定基準を満たしていると診断された時点で厚生年金に加入していなくても、その病気やケガによる症状で最初に医療機関で受診した日=初診日が厚生年金加入時であればOKだ。

 つまり、申請時点で国民年金のみ加入の人でも、厚生年金から給付を受けることが可能だ。体の調子が悪いなと思ったら、退職前に専門医にかかっておくことが大切といえるだろう。退職後に傷病が見つかって障害認定されたとしても、その障害に関係する傷病での初診日が厚生年金加入時であると証明されなければ、厚生年金からの給付は受けられなくなってしまうということを、ぜひ覚えておきたい。

 毎月何万円もの生命保険料を余分に払うよりも、ちょっとした社会保険知識が、いざというときに絶大な威力を発揮するのである。

(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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