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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

会社から社員への「誕生日祝い金」、福利厚生費として認められない?所得税の優しいルール

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きなポークは「裏ポーク」です。

 自社の従業員に結婚や出産といった祝い事があったとき、みなさんはどうしていますか。部署のメンバーでお金を集めて、祝い金を渡しているケースもあると思います。あるいは、会社から一定金額が支給される制度があるかもしれません。

 一方、同じ祝い事でも、誕生日はどうでしょう。

 上司や部下が誕生日だからといって、「よし、何かお祝いをしよう」と考える会社は少ないと思います。「おめでとう」と言うことさえ、少ないのではないでしょうか。心を許していない上司や部下の誕生日を祝ったり祝われたりすることを、苦痛に感じる人もいるでしょう。

 さて、もし会社が従業員の誕生日に祝い金を渡していたら、そのお金は会社の損金となるでしょうか。損金となる場合、どのような勘定科目を選択するのが適切でしょうか。

 地方で印刷業を営むAさんは、従業員に支払っていた誕生日の祝い金を「福利厚生費」として処理していたところ、税務調査で否認され「不納付加算税」を賦課されてしまいました。給与として扱うものだと指摘されたわけです。

 所得税の基本通達には、こんなやさしいルールが書かれています。

(雇用契約等に基づいて支給される結婚祝金品等)
28-5 使用者から役員又は使用人に対し雇用契約等に基づいて支給される結婚、出産等の祝金品は、給与等とする。ただし、その金額が支給を受ける者の地位等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税しなくて差し支えない。

 至極簡単にまとめると、「お祝いのお金は、本当は給与になるけれど給与に含めなくていいよ。源泉所得税を引かなくていいよ」と言ってくれています。

 こういう福利厚生的な支払いは、一部の役員だけに支給する場合は課税されることもありますが、Aさんの会社はすべての従業員に支給していました。それも、社長の気まぐれで渡すようなお金ではなく、「誕生祝実施要領」に基づき、独身は1万円、既婚者は1万5000円と定めていました。「お誕生日をみんなで祝おう」という気持ちが伝わってきます。なんて、素敵な会社なのでしょうか。

 しかし、渡した現金の分を福利厚生費で処理していたことが、調査で指摘されてしまいます。福利厚生費とするか給与とするかは、難しいところだと思います。

 この場合、給与所得に該当するかどうかは、従業員としての地位に基づいた、労務の対価であるか否かを中心に検討すればよいでしょう。お誕生日の祝い金は、働いていない社外の人はもらえないので、この点では給与に該当すると考えられます。

 給与にはなるけれど、前述の通達で、広く一般に社会的な慣習として行われている祝金品の贈答は、儀礼的な要素が強いため、会社と社員の関係でなくとも行われる事実を踏まえ、社会通念上相当と認められ、常識的な金額には課税しないとされています。

誕生日祝いは、「給与」として算定すべき

 では、誕生日のお祝いはどうでしょう。誕生日に現金をあげるでしょうか。せいぜい、ケーキやプレゼントにとどまるのではないでしょうか。また、友達同士ならまだしも、社内で祝うことが一般的でしょうか。これらの点を踏まえると、Aさんの主張はやや厳しいかもしれません。

 ただ、金額面で見るとどうでしょう。祝い金としては、なんら高額ではないと思います。大学生であっても、みんなでお金を出し合って1万円くらいのプレゼントは買うでしょう。

 Aさんの会社に就職して、「この会社では誕生月に祝い金がもらえるんだよ」「はい、どうぞ。開けてごらん」と言われて、祝儀袋の中に3000円しか入っていなかったら、悲しい気持ちになるでしょう。「この会社はなくなるかもしれない」と、絶望的な気持ちになるかもしれません。

 誕生日をお祝いする制度はとても素敵です。ただ、現在のルールでは、給与として課税するのがいいかもしれません。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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