「ZOOM飲み会」普及でアルコール依存症増加の懸念…“ストロング系”缶チューハイで拍車
在宅ワークが広まり、今までオンライン会議に二の足を踏んでいた会社やビジネスパーソンも、オンライン会議をするようになってきました。
現在、さまざまなオンライン会議システムがありますが、通信量の軽さや導入の手軽さから、「ZOOM」がもっとも伸びているようです。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界中で在宅ワークが行われるようになってから、使用回数がなんと20倍にもなったと報じられています。そしてさらには、「ZOOMER」や「ZOOM飲み会」という言葉までインターネット上を中心に見受けられるようになりました。
特に、この ZOOM上で雑談しながらお酒を飲む「ZOOM飲み会」は、全国で非常事態宣言が発令されたことで飲食店や居酒屋で飲みづらくなっていることもあり、急速に全国的に広がりつつあります。
終電が関係ないので帰宅時間を心配する必要がない、また自宅飲みなので飲み代が安くあがることなどから、酒好きの人にとっては、ついアルコールの量が増えてしまいがちです。
実際に、通常勤務から在宅勤務になって1カ月たつビジネスパーソンに対して、私たちが行ったアンケートでは、アルコールの量が「通常勤務時より少し増えた」と、答えた方がもっとも多かったです。
もちろん、反対に以前よりお酒を飲む量が減った人たちもいます。そういった人たちの傾向としては、「もともとお酒が好きではなかった」「家族の前だと飲みにくい」といったコメントが目立ちました。
「少し増えた」「かなり増えた」(実際の量は把握できていないので、主観で答えていただいています)と答えた方は、その理由として「ZOOM飲み会で、つい飲みすぎてしまう」「もともとお酒が好きで、家にたくさんあるため、つい飲んでしまう」「家にいてやることがなく、つい飲んでしまう」などを挙げています。
日本人は世界的に見ても「酔っ払い」に関して寛容な文化がある上に、アルコール分解の能力が低い傾向があることから、“飲みすぎリスク”は非常に高いといえます。
そして、外出自粛が続いて世間の目が届かない状況が続いているなか、オンラインだけでつながってお酒を飲むことは、今までアルコールの摂取を抑えてきた人たちが一気に限度を超えてしまう可能性があるのです。
平成28年に厚生労働省が行った国民健康・栄養調査によると、日本人男性の14.6%が「危険な飲酒量」である1日の純アルコール量40gを上回っていたそうです。
自粛要請が行われる前の時点で、実に成人男性の7人に1人が飲みすぎていたわけです。この外出自粛が続くことによって、アルコールがやめられなくなる「アルコール依存症」が増えないことを願うばかりです。
そして最近の流れとして、非常に心配になる傾向があります。それは缶チューハイの高アルコール化です。アルコール度数7%以上の缶チューハイの売り上げは、過去10年でおよそ4倍に増加しています。最近では12%という、ワインとさほど変わらないアルコール度数の缶チューハイまで登場しており、その勢いは加速しています。
ZOOM飲み会のような場で、高級なお酒を飲むことは少ないでしょう。“ストロング系”缶チューハイのような口当たりがよく、安くてすぐに酔えるタイプのものが重宝される傾向があります。そして、こういったタイプのお酒は、ワインなどに比べて、おつまみでジャンクフードを合わせやすいことがわかっています。
そこでおすすめなのが、ZOOM飲み会ではなく「ZOOMお茶会」と名称を変えてみることです。これは筆者の周りで実際にあった例ですが、名称を変えただけで同じ時間に同じ参加メンバーでも、お酒を飲む人が半減したそうです。
また最近は、飲む量を最初に宣言したり、タイムキーパーが終了時間を管理するように工夫したりと、さまざまな対策をとっているケースもあるようです。
あなたがもし最近アルコールを飲む量が増えているなと感じたら、ぜひ周りとこういった取り組みにチャレンジして、アルコールと上手に付き合ってください。
(文=角谷リョウ/Lifree株式会社・取締役、パーソナルトレーナー)