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荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」~新型コロナで収入が減ったら、何をすべきか~【住宅ローン編】

住宅ローンが払えなくなったら実際どうなる?任意売却の注意点、自己破産は最悪の第3段階

文=荻原博子/経済ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 住宅ローンが払えなくなると、すぐに家を追い出されるというイメージを持っている方も多いかと思います。ですから、「キャッシングしてでも、住宅ローンをなんとかしなくては」ということになりがちですが、住宅ローンを滞納したからといって、すぐに家を追い出されるというケースはほとんどありません。

 実は、私の知り合いで、事業に失敗して住宅ローンが払えなくなってしまった人がいました。彼は、金融機関とも相談し、あの手この手でいろいろと試行錯誤したのですが、やはり難しく、最終的には家が競売にかけられ、出て行くことになりました。

 ただ、支払いができなくなってから10カ月ほど、その家に住み続けていました。その間、月15万円の住宅ローンを一銭も払わずに住んでいたのです。そこで、あまりあってほしくはないことですが、住宅ローンが払えなくなったら、いざというときにはどうなっていくのかを見ておきましょう。

【第1段階】金融機関からのお尋ねには迅速に対応する

 住宅ローンを滞納すると、早くて次の日、遅くとも2~3日後に、お金を借りている銀行から催促の電話が来ます。書面で「入金のお願い」が来るところもありますが、最近は一刻も早くということで、電話をかけてくるところが多いようです。

 この電話や手紙を無視してはいけません。金融機関は、連絡した相手から回答がないことを嫌います。なぜなら、応答がないと、住宅ローンの担当者は上に報告ができないからです。また、貸した金の回収には「時効」があるので、なるべく早く相手に「督促があった」ことを認めさせ、あとで「知らなかった」などと言われて借金を踏み倒されないようにしたいからです。

 その第1段階が「相手に対する通知」で、これを無視すると「借金を踏み倒そうとする悪質な借り手」ということで、家に来るなど強硬な態度をとられる可能性があります。

 もし住宅ローンが支払えない状況になってきたら、まずは金融機関に出向き、事情を説明して一緒に対策を考えてもらいましょう。特に、今は新型コロナウイルスという特殊事情があるので、金融機関も親身な対応をしてくれるはずです。できれば、この段階でなんとかしたいものです。

 ちなみに、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の住宅ローンの時効は10年です。10年間、督促もなく返済もなければ、借金は消滅してしまうということです。

【第2段階】「任意売却」は売る側のメリットを考えて

 金融機関に出向いて新しい返済計画をつくってもらったものの、その後に収入面などで事態がさらに悪化し、一銭も払えなくなってしまうということもあるかもしれません。そうなると、金融機関に再度相談してみようという気力もなくなってきます。

 金融機関も、スケジュールの変更その他でさまざまな方策を考えてくれますが、それでも解決しないとなれば、なんとか家を売ってお金を返してもらえないか、ということになります。そのときに持ちかけられてくる話が「任意売却」です。

 金融機関が勧める任意売却とは、売主の同意を得て家を売却し、その代金でローンを支払うというものです。この場合、家が高く売れれば、住宅ローンの残債を払っても手元にお金が残ります。ただ、住宅ローンを借りたばかりで残債が大きく、家が思うように売れない場合には、住宅を手放しても住宅ローンだけが残るということになります。

 前回の記事で述べたように、日本の住宅ローンは家がなくなった時点で借金もなくなるという、欧米のような「ノンリコース」ではありません。ですから、家を売った後に住宅ローンだけが残る可能性があります。けれど、それではなんのために家を売るのかわからない。

 ですから、少しでも高く売らなくてはならないのですが、家の売却は一朝一夕にはいきません。3カ月たっても売れないというケースも往々にあります。また、売れるにしても、売主が到底納得できない金額になる可能性があります。その場合には、最悪の状況の第3段階に移行します。

【第3段階】最悪「自己破産」で残りの借金もなくなる

 半年以上、住宅ローンを滞納したままで支払いができず、任意売却もうまくいかない場合は、金融機関も住宅ローンを回収するために、借入金の全額を住宅ローンを保証している保証会社に請求し、「代位弁済」として、そちらから回収しようとします。

 代位弁済になると、借金を取り立てるのは金融機関ではなく保証会社になります。保証会社は取り立てを業務にしていますから、給料や売掛金を差し押さえたり、強硬な返済請求をしたりする可能性もあります。そして、最終的には家を競売にかけて債権を回収しようとします。ただ、競売にかけてもなかなか売れず、売れても市場価格の6割ほどというケースが多いために、これで住宅ローンの残債を全額払うというのは難しく、どうしてもローンが残るケースが出てきます。

 その場合には、これ以上返済能力がないということで「自己破産」し、残りの借金を「免責」でなくすことができます。日本では、家を売ってしまっても住宅ローンの残債は残ることになります。ですから、これをチャラにするために、自己破産と同時に免責の手続きをしてもらい、それ以上の借金は払わなくてもいいようにしてもらいます。

 自己破産することには、罪の意識を感じる人も多くいます。確かに、自己破産というのは一種の借金の踏み倒しですから、あまりおすすめできるようなことではありませんが、新たな人生を歩んで行くには、古い借金があっては難しいかもしれません。

 また、自己破産の手続きが始まれば、債権者は給料の差し押さえなどの強制執行はできなくなります。また、住宅以外のある程度の財産は手元に残すこともできます。

 自己破産すると、数年間は借金ができなかったりクレジットカードがつくれなかったり、会社の代表取締役になれないなどのペナルティーはありますが、自己破産した人の名前は官報に出る程度ですから、職場で噂が広まったり取引に影響したりするようなことはないでしょう。もっとも身近にいる妻さえも、黙っていれば夫の自己破産を知らずにいるというケースも多いです。もちろん、年金や失業保険も受け取ることができます。

 警察庁によれば、3月の自殺者は1701人でした。その中に新型コロナの影響を受けている人がどれだけいるかはわかりませんが、まず大切なのは「命」。それをなくすような状況に追い込まれないように、万全の対策を考えておきましょう。

(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)

荻原博子/経済ジャーナリスト

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

『「郵便局」が破綻する』 コロナショックで「郵便局」があぶない。「破綻」の理由と、大事なお金を守る方法。名ばかりの「郵政民営化」により、収益もコンプライアンスも悪化した「郵便局」。かんぽ不正販売や長引く超低金利で弱ったところを株安が襲う。もっとも身近な金融機関「郵便局」破綻の衝撃から私たちはどのように身を守るべきか。必読の一冊。 amazon_associate_logo.jpg

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