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新型コロナウイルスの影響で困窮する外国人留学生に対して、日本人学生と区別して、学生支援緊急給付金対象者を成績上位3割程度(正確には前年度の成績評価係数が2.3以上。目安)で8割以上の出席率、などとする要件を設けた。この成績上位3割という要件は日本人学生にはないのにおかしい、と批判が沸き上がっている。
いずれ母国に帰る留学生が多く、日本に将来貢献する可能性の高い人材に限りたいというのが本音のようだ。しかし、海外で学んだ後は母国に帰って、家族を含め地元の社会に貢献するというのが、留学のスタンダードモデルであろう。
コロナは人種を問わず、多くの学生を生活困窮に導く。最大20万円の現金給付を、外国人留学生だけ「成績上位」に絞るというのだから、疑問の声が上がるのも当然だ。関東弁護士会連合会は、外国人留学生にだけ「成績上位3割」程度の要件などを課しているのは「公平を欠く」として、撤廃などを求める声明を出した。
噴出する批判に対して、文部科学省は「成績はあくまで目安。大学が認めれば給付対象になる」と釈明している。早速、京都大学は成績や出席率の条件を外すという決断をした。京大に入学するような留学生はほとんどがハイレベルな学力で、上位30%に絞るのは難しい、という判断もあるのであろう。
しかし、成績の条件はともかく、出席率に一定の条件を設けるのはやむを得ない、という意見もある。留学生の中には、就労目的で来日し、授業よりアルバイトなどに励む事例が少なくなく、出席率で歯止めをかけるべきという見方も成立するからだ。
また、この給付金の対象要件が、家庭から多額の仕送りを受けていない、原則自宅外で生活、家庭の収入源で追加支援が期待できない、などなので、必然的に日本人学生より留学生の該当者が多くなるという読みもあったはずだ。
留学生は30万人以上に増加し多層化の問題も
文科省は4月下旬に外国人留学生の在籍状況調査を公表した。日本学生支援機構の調査では、2019年5月の時点で31万2214人、11年は16万3697人だから、まさに倍増ペースである。政府は留学生30万人計画を立てていたので、この目標は早々と達成した。留学生の出身国は、おおよそ中国12万4000人、ベトナム7万3000人、ネパール2万6000人、韓国1万8000人、台湾9000人などとなっている。
この量的な拡大で、留学生の実態について、いろいろな問題も指摘されてきた。30万人もいる留学生の多層化が進んでいるのだ。京大で学ぶ留学生と、中堅私立大下位校の留学生や日本語学校の学生とでは、成績上位3割ラインでも学習意欲や学力に相当な差があるというわけだ。
ただ、今回の給付金に日本語学校の学生を含めたことを評価する声もある。来日当初は、大学などの授業を理解するため、ほとんどの留学生が日本語で聞く読む能力を身につける必要があるからだ。問題は、その日本語能力をどこで発揮するかである。
たとえば、19年に、東京福祉大学で学部研究生ら留学生約1600人が所在不明になり、私学助成金が不交付となっている。同大は近年になって留学生の受け入れを急拡大。16~18年度に約1万2000人の留学生を受け入れたが、19年にはそのうち1610人が所在不明、700人が退学、178人が除籍になっていた。