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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

税務調査官の杜撰すぎる調査で最高裁まで大揉め…くだらなすぎる裁判、衝撃の結末に

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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「Getty Images」より
「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな小説の書き出しは「吾輩は社長である。税務調査はまだない」です。

 納税者が受ける税務調査は、人生で多くて数回、ほとんどの人が一度も受けることなく、天寿をまっとうすると思います。だから、専門家の知恵がないと、何が正しくて何が悪いのかわかりません。それは、自分の行為だけに限らず、調査担当者の行為についても同様です。だから、個人的には、顧問料を節約せずに素敵な税理士の先生と契約することを推奨しています。

 今回は、声をあげて笑った、杜撰な税務調査を紹介します。

 調査担当者のAは、ある個人事業者のところに事前の連絡をせずに臨場しました。現在では、予告なしで臨場することはほとんどありません。予告をしないことに理由がある場合を除いて、無予告での調査はできないのです。

 Aが訪ねた個人事業者の工場には、調査対象となるBがいましたが、少し話をしたところで、帰るように言われてしまいました。

「そんな急に来ても、対応できないから。今忙しいから、来週電話するよ」

 Aはこれを受け入れ、電話を待ちましたが、Bからの入電はありません。再び、工場に行き、Bと話をしました。

「ごめんごめん。忙しくってさ。今日も無理だから、電話するよ」

 Aはこれを受け入れ、電話を待ちましたが、Bからの入電はありません。再び、工場に行き、Bと話をしました。

「ごめんごめん。来月の4日なら空いてるから、その日に来てよ」

 Aは、やっと調査ができると思い帰ろうとしましたが、その日は都合が悪いことに気づきました。

「おっけ、おっけ。じゃあ今度電話するよ」

 Aはこれを受け入れ、電話を待ちました。しかし、Aが不在のときに電話があり、同僚のCが電話に出ました。Bが都合の良い日を告げると、Cは「Aの都合がわからないから、電話をさせる」と言って電話を切りました。

 帰ってきてそのことを聞いたAは、Bのところに電話をしましたが、従業員のDしかおらず「別の日にしてもらいたいと伝えてほしい」と言って、電話を切りました。

 しかし、その後、Bからの連絡はなかったため、Cから聞いたBの都合のよい日に臨場しましたが、Bはいませんでした。従業員によると、Bは、今日はAの都合が悪いと考えて朝からでかけているとのことでした。

Aの大失態

 ここまで聞いても、「A!何やってんだよ」と、辛辣な意見を述べたくなってしまいます。調査対象者に主導権を握られ、結局約束をせずに臨場して空振りに終わる。その時間に対して支払われた給与は、誰が払っているのでしょうか。しかし、Aの失態はまだ続きます。

 この日、Bが電話で言っていた時間より少し早く工場に着いたAは、定刻まで待つことにしました。Bが調査に協力的でないのは明らかで、わざわざ定刻に戻ってくるとは思えません。しかし、Aは待ちました。これがよくなかったのです。

 待っている間に、鍵のかかっていない工場の中に入り、Bが不在かどうか確認したのです。たとえ調査であっても、私有地に無断で立ち入ることは許されません。

 運の悪いことに、Aはこの瞬間を近所の人に見られてしまいました。Bは、後にこのことを知り、税務署に抗議、さらに地方検察庁に告訴しました。このような事態となっては、もはや税務調査どころではありません。

 他人から見ると、くだらないこの出来事は、被告側の控訴と上告によって最高裁まで争われることになり、結果、Bに精神的苦痛があったとして、国から10万円が支払われることになりました。

 Bの非協力的態度を考慮しても、Aは軽率のそしりを免れず、正当な範囲を超えた行為であるといえます。調査担当者には強い権利が与えられていますが、だからといって、すべてが許されるわけではないのです。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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