ビジネスジャーナル > ライフニュース > 人工甘味料でも体重増加との研究結果
NEW
岡田正彦「歪められた現代医療のエビデンス:正しい健康法はこれだ!」

人工甘味料でも「体重増加」との研究結果…ホルモンのバランスに異常

文=岡田正彦/新潟大学名誉教授
人工甘味料でも「体重増加」との研究結果…ホルモンのバランスに異常の画像1
「GettyImages」より

「カロリーゼロ」は最近のトレンドです。甘いのに砂糖などの糖質が入っていない商品のことで、代わりに使われているのが人工甘味料です。人工甘味料は、肥満対策の救世主のごとく世の中に登場し、いまでは多くの飲料水、お菓子、アイスクリームなどに添加されています。

 最大のセールスポイントは、カロリーゼロで太らないということです。ところが最近、「そうとも限らないようだ」という研究報告が米国でありました【注1】。いったい、どういうことなのでしょうか?

 まず人工甘味料という言葉の意味をまとめておく必要があります。これが最初に登場したのは明治の時代で、サッカリンという物質でした。大量に使われるようになったのは戦後で、当時、サッカリンには発がん性があるのではないかとの噂も流れました。しかし科学的な実験と調査が精力的に行われた結果、いまでは発がん性は完全に否定され、制約はあるものの食品への添加も認められています【注2】。

 人工甘味料の中心は、「砂糖から化学的につくられるスクラロース」「人工合成のアスパルテーム」、それに「植物から抽出されるステビア」です。国内では、前2者と「酢酸から作られるアセスルファムカリウム」の3種類が主に使われています【注3】。それぞれ、化学構造も体内での働きもまったく異なるため、ひとくくりにはできない難しさがあります。

サッカリンの問題点

 さて、米国で行われた研究とは次のようなものでした。まずボランティア154人を募り、無作為に5つのグループに分けた上で、それぞれ異なる甘味料で味つけした一定量の飲料水を毎日、飲んでもらうことにしました。グループ分けは、年齢や性別、肥満度、生活習慣などに偏りがないようコンピュータで厳密に行われました。

 添加したのは、サッカリンを含む4種類の人工甘味料、それに砂糖です。甘さが同じになるように飲み物を調整しましたので、本人たちは、どれを割り当てられているのかわかりません。

 12週間後、体重がどうなったかを比べました。その結果、砂糖を添加した飲料水を飲んだ人たちは、もちろん体重が増えていましたが、驚いたことにサッカリンを添加した飲料水を飲んだ人たちも、明らかに増えていたのです。逆に体重が減少傾向を示したのはスクラロースでした。

 では、なぜサッカリンで体重が増えてしまったのでしょうか。

 人工甘味料の特徴のひとつは、砂糖の数百倍もの甘みを感じさせるということです。そのため人工甘味料の摂取によって、きわめて強い甘さの刺激情報が脳に伝わることになりますが、血液中にはそれに見合うだけの糖質が存在しないため、ホルモン・バランスに乱れが生じてしまいます【注4】。

 その結果、インスリンというホルモンの効き目に異常が生じ、血糖値の調節とともに、脂肪の燃焼が妨げられるのではないか、と考えられるのです。また動物で行われた実験から、腸内細菌のバランスを乱し、糖質の吸収に悪影響を及ぼすこともわかっています。

 人工甘味料の安全性や肥満との関係を調べた研究は以前からたくさんありましたが、これほど本格的な調査は初めてでした。人工甘味料は安全であり、体重が増えることもないというのが常識とされてきましたが、その根拠は意外と希薄なものだったようです。

 海外でよく使われるスクラロースだけを対象にした過去の研究では、太ることはないとの結論になっていて【注5】、このたびの研究結果と矛盾しません。

 問題はサッカリンなのです。苦みが少しあるため、最近はあまり使われなくなっているようですが、データが十分に公開されておらず実態がよくわかりません。

 カロリーゼロという言葉に惑わされて、甘く感じる飲料やお菓子、アイスクリームなどを飲みすぎないこと、食べ過ぎないこと。これを生活の知恵として覚えておくとよいでしょう。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)

参考文献
【1】Higgins KA, et al., A randomized controlled trial contrasting the effects of 4 low-calorie sweeteners and sucrose on body weight in adults with overweight or obesity. Am J Clin Nutr 109: 1288-1301, 2019.
【2】厚生労働省, サッカリンナトリウムの使用基準の改正に関する部会報告書, 2011.
【3】坂西裕介, 近年における人工甘味料の動向. 独立行政法人農畜産業振興機構. 2014.
【4】O’Connor A, Can artificial sweeteners keep us from gaining weight? New York Times, Aug 20, 2020.
【5】Baird IM, et al., Repeated dose study of sucralose tolerance in human subjects. Food Chem Toxicol 38: 123-129, 2000.

岡田正彦/新潟大学名誉教授

岡田正彦/新潟大学名誉教授

医学博士。現・水野介護老人保健施設長。1946年京都府に生まれる。1972年新潟大学医学部卒業、1990年より同大学医学部教授。1981年新潟日報文化賞、2001年臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。専門は予防医療学、長寿科学。『人はなぜ太るのか-肥満を科学する』(岩波新書)など著書多数。


岡田正彦

人工甘味料でも「体重増加」との研究結果…ホルモンのバランスに異常のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!

RANKING

23:30更新