
元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな税理士は「OB税理士」です。
ぼくの知り合いの公認会計士が、初めて税務調査に立ち会いました。公認会計士の資格には、税理士の資格が付いてきます。普通自動車の免許に原動機付自転車の運転資格が付いてくるように、税理士の資格が“おまけ”で付いてくるのです。ちなみに、弁護士の資格にも税理士が付いてきます。
一部の税理士の方は、おまけで付与される税理士資格に不満があるようですが、ぼくにはわからない複雑な感情です。
芸歴20年のある芸人に対して、税務調査が行われました。その芸人は、業務に関連する支払いの領収証はすべて保管し、毎年、きちんと確定申告をしていました。
収入は、居酒屋のアルバイトと稀にあるテレビ出演と営業のギャラで、昨年話題になった闇営業はなかったそうです。誰もが直接の取引にありつけるわけではないのです。
税務調査を受けるのは初めてです。何が行われるのか、どのような準備をすればいいのかもわかりません。彼は自分が犯罪者になったような気分に襲われたそうです。自分は何か悪いことをしたのか、いつのまにかまずいことをしてしまったのか、このまま逮捕され、報道され、芸能活動を休止に追い込まれるのか、そんな考えがよぎったといいます。
普通は税務調査のことなどわかりませんから、それは仕方ありません。不安で眠れない日々を過ごした後、知り合いの公認会計士に相談しました。
相談を受けた公認会計士は、税務調査への立ち会いを提案しました。立ち会い料は4~10万円が相場です。しかし、アルバイトをする芸人から、その金額を徴収するのは憚られたため、無償で受けることにしました。無償にした理由は、もうひとつあります。その公認会計士には、税務調査の立ち会いの経験がなかったからです。
なぜ収入の少ない芸人に税務調査が行われたのか
税務調査は、芸人の自宅で午前10時から行われました。
アルバイトでの年収が300万円、芸人としての年収が50万円、給与所得と事業所得で申告を行い、所得の合計は50万円ほどでした。公認会計士は、尋常ではないくらい緊張していました。調査で何が行われるのか、何をしていいのか、芸人が正しく申告しているのか、まったくわからなかったからです。