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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

「人気取りのため根拠なく…」東京・小池知事“脱ガソリン車”宣言、自動車業界に大打撃

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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小池百合子都知事のインスタグラムより

「⼈気取りのために根拠もなく、国より脱ガソリン⾞を前倒しで宣⾔するなんて無責任
もいいところだ」

 ある大手自動車メーカー関係者は、東京都の小池百合子知事が8日の都議会本会議で、都内で販売される新車について2030年までに「脱ガソリン車」とする方針を示したことに、こう憤る。

 国は新車の脱ガソリン化を「2030年代半ば以降」とする方向で調整しているが、都は従来の2050年を大幅に前押してこれに先行する格好となった。ただ、国が「年代半ば以降」と含みを持たせたのは「実現できなければ政府の責任問題になるため、臨機応変に対応できる余地を残したかった」(中堅メーカー)からで、裏を返せばそれほど実現性が怪しい目標だといえる。

「欧米中が相次いで脱ガソリン車の方針を打ち出す中で、日本政府もやむを得ず宣言した。本質は外交問題。電気とガソリンを併用するハイブリッド車も対象に含めることでお茶を濁すのが基本戦略」(全国紙経済部記者)というのが実情だった。

 そこに、小池知事の5年前倒し宣言である。都によると、19年度の都内の乗用車の新車販売台数に占める脱ガソリン車の割合は4割程度にとどまる。小池氏は「気候変動に立ち向かう世界の大都市共通の責務」と説明し、充電設備の整備を進めるほか、電気自動車のレース開催などを通じて都民への普及啓発を進めるという。

 東京都の「脱ガソリン車」の対象は、電気自動車や燃料電池車、ハイブリッド車などで、「ハイブリット車が対象に入ったのはありがたいが、車種を増やすために新車開発コストがのしかかってくる」(冒頭の大手メーカー関係者)と頭を抱える。

英米を実情考えずに猿真似

 今回の都の前倒しは、英国がガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年から禁止したことと、米国カリフォルニア州が35年までに州内で販売される全新車を排ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするよう義務づける方針を掲げたことに影響を受けたと見られる。確かにこの2つの例に見られるように、脱ガソリン化が世界の潮流であることは間違いない。

 ただ、これまで内燃機関と搭載したガソリン車で世界トップの自動車産業を築き上げてきた日本とその他の国とは、まったく事情が違う。自動車業界は関連産業まで含めると550万人の雇用を生み出しているといわれ、電動化により部品点数が少なくなれば、雇用の減少は避けられない。「企業は利益のことだけを考えればいいが地元政治家にとっては雇用の維持が最優先課題で、そこをうまく調整しながらソフトランディングさせないといけない」(自動車業界に詳しいベテラン国会議員)ため、一筋縄ではいかない。自動車産業としては後発で電動車開発を急ぐ中国や、自国資本の自動車メーカーが事実上存在しない英国、テック産業に寛容なカリフォルニア州と、うわべだけ見て同じようにやってもうまくいかないのは明らかだ。

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