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江川紹子の「事件ウオッチ」第167回

相次ぐ困窮孤立死を防ぐために「自助」を求めるよりも重要なこと…江川紹子の提言

文=江川紹子/ジャーナリスト
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Getty Imagesより(写真はイメージです)

 年の瀬に、またひとつやるせないニュースが報じられた。

 大阪市港区にあるマンションの一室で、女性2人の遺体がみつかった。ここに住んでいた母親(68)と娘(42)とみられる。解剖の結果、死因は餓死。冷蔵庫のなかは空っぽで、財布には現金が13円しか残っていなかった、と報じられている。ガスや水道も止められていた。経済的に困窮し、社会的にも孤立して誰にも助けを求められないまま死に至ったと思われる。

母娘、兄弟、母息子……近年相次ぐ「困窮孤立死」

 12月19日の毎日新聞電子版によれば、女性らは2020年8月から水道料金を滞納。10月中旬から水の使用量がゼロになり、大阪市水道局は11月中旬に給水を止めた。2人の遺体は、いずれも死後数カ月が経過しているというから、10月中には死亡していたのではないか。

 このように、ライフラインが止められるほど困窮していながら、福祉とのつながりがなかったり、あるいはコミュニケーションが十分でない状況で死亡し、だいぶ経ってから遺体がみつかる、というケースは、他の地域でも起きている。

 昨年12月には、東京都江東区の集合住宅で、72歳と66歳の兄弟の遺体がみつかった。異臭がすると通報があり、駆けつけた警察官が発見した。死後4~10日経っており、餓死とみられる。

 弟は無職、兄も前年秋に体調を崩して仕事を辞めていた。いずれも無年金で、生活保護も受けていなかった。部屋にはわずかな小銭しか残っておらず、電気とガスは死の2カ月以上前から止められていた。水道も料金滞納で、止められる寸前。都水道局は、兄弟の部屋を繰り返し訪問していた。しかし、江東区に状況が伝えられることはなかった。

 今年2月には、大阪府八尾市の集合住宅で、無職の母親(57)と長男(24)の遺体がみつかった。母親は死後1カ月以上、長男は10日ほどが経過していた。母親がなんらかの事情で死亡した後、長男が餓死したらしい。母親が生活保護を受給していたが、1月分の支給日には市役所に姿を見せず、連絡もとれなかったことから、市は遺体発見の4日前、生活保護の廃止を決めていた。水道やガスは料金滞納で止められていた。市水道局の業務委託先の従業員が複数回、自宅を訪問したが、応答がなかったという。

 水は、人間の生存に不可欠で、ライフラインのなかでも命に直結することから、料金を滞納したからといってすぐに止められることはない。水ジャーナリストの橋本淳司さんによれば、停止に至るには通常、次のようなプロセスをたどる。

1 督促状が届く(目安:納付期限から2週間~20日間後)
2 催告状(勧告状)が届く(目安:納付期限から1カ月後) 
3 給水停止予告書(給水停止執行通知書)が届く(目安:納付期限から約2カ月後)
4 給水停止(給水停止予告書に記載されている最終納付期限から数日以内)

 水道料金が払えないほど困窮している場合は、水道局に相談すれば、低所得者向けの減免措置申請を行ってもらえる可能性がある。また、東京都などでは、給水停止予告書に「生活にお困りの方については、区の福祉事務所で生活保護などのご相談をお受けしております」などと、福祉窓口への相談を促す文言を付記している。

 問題は、社会的に孤立し、みずから相談や申請に赴けない人たちのケースだ。

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