残酷な日本の「養鶏」…超高密度のケージ&窓なし飼育、維持のため業界が元農水相に贈賄の画像1
「Getty images」より

 吉川貴盛元農水相が15日、収賄の容疑で東京地検特捜部に在宅起訴された。大臣在任中に大手鶏卵生産会社アキタフーズ元代表から現金500万円を受け取った疑いが持たれている。西川公也元農水相の起訴は見送られたものの、アキタフーズ元代表は両元農水相に、日本の養鶏が密集飼育に否定的な内容の国際標準になることを防ぐよう働きかけていた。

 日本の養鶏基準は、昨今世界で重視されている「アニマルウェルフェア(動物福祉)」をまったく考慮していない。日本の大手養鶏は高密度の「ケージ」(「バタリーケージ」)飼育で、さらに感染症対策のために窓のないウィンドウレス鶏舎のもと薄暗い中で飼育している。幅60センチ、奥行き40センチのケージの中に10羽の鶏が押し込められ、すし詰めで踏み締める土もない。

 これに対して、EUは工場的畜産システムを反省し、アニマルウェルフェアを柱とする畜産政策を進め、2012年には「バタリーケージ」を廃止。ルクセンブルクでは養卵用の鶏は100%、ドイツ、スウェーデン、オーストリアでは9割以上がケージフリーで飼育されている。このアニマルウェルフェアの考え方が、日本も加盟する国際機関OIE(国際獣疫事務局)にも影響を与え、OIEは17年から飼育指針の検討を始め、18年9月には「止まり木」「巣箱」の設置を義務付ける指針案を策定した。設置義務が国際的に認められたならば、バタリーケージ飼育はできなくなり、大手養鶏業者が打撃を受けることになる。

 この指針案を修正することを狙ってアキタフーズ元代表は元農水相らに現金を渡していた。結局、OIEは日本政府の働きかけで設置義務をなくしてケージ飼育を容認する飼育指針となった。

アニマルウェルフェアに逆行する日本

 もともと、アニマルウェルフェアは1993年にイギリスで策定された、「飢えと渇きからの自由」「不快からの自由」「痛み、傷、病気からの自由」「通常行動への自由」「恐怖や悲しみからの自由」という「動物の5つの自由」から始まっている。

 このアニマルウェルフェアの考え方は、当時、ヨーロッパやアメリカで広がっていた工場的畜産システムを問題視するものだった。工場的畜産システムは、効率性と生産性を重視して家畜を狭い場所に押し込め、生産するもので、鶏卵生産におけるバタリーケージはその典型的なものであった。1997年にはアムテルダム条約で、家畜を「感受性のある生命存在」との宣言をした。さらに2009年のリスボン条約においても「動物は感受性のある生命存在であることから、動物の福祉要求に対し最大限の関心を払う」ことがEU各国に義務付けられたのである。

 日本では1990年には8万6500戸あった飼養農家は、1戸あたりの採卵鶏の飼養規模は1583羽といった規模だった。その後、2020年には飼養農家は3300戸にまで減少し、1戸あたりの飼養数は4万3000羽と27倍になった。農家経営から企業的工場的経営に移行し、バタリーケージによる高密度飼育に頼っている。

 また、日本は渡り鳥による鳥インフルエンザ感染の危険性が高いため、ウィンドウレス飼育が通常となっている。日の当たらない光もない暗闇の中で高密度飼育されている鶏は、世界的にも残酷な飼育形態といえる。

 そうした状況のなか、アニマルウェルフェアの国際基準化という流れに対して、業界は元農水相への贈賄で阻止しようとしていたのである。日本でもアニマルウェルフェアへの関心が高められる必要があろう。

(文=小倉正行/フリーライター)

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