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深野康彦「あなたと家族と日本のための、お金の話」

住宅ローン金利、ジワリ上昇の兆し、早めの対処が重要…日銀、金融緩和策を修正の可能性

文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー
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「Getty Images」より

 日本銀行が大規模な金融緩和を継続しているにもかかわらず、長期金利は緩やかに上昇しています。2月中旬には指標の10年物国債利回りが0.105%と約2年3カ月ぶりの高い水準まで上昇、さらに償還期間の長い20年、30年物の金利も上昇基調にあることから、住宅ローン金利も緩やかですが上昇基調にあると考えたほうがいいかもしれません。

 金利が上昇する背景は2つあり、1つが米国の景気回復を背景とした金利の上昇、2つ目は日本銀行が金融政策を微修正するかもしれないという思惑です。米国では新型コロナウイルスのワクチン接種の進展により景気の回復が加速するという予測に加え、バイデン政権が1.9兆ドルもの追加経済対策(6回目)を行う可能性が高まったことから、国債の需給悪化がプラスされ長期金利の上昇に勢いがつきつつあるのです。コロナ対策は進展こそすれ後退は考えにくいことから、米国の金利上昇は継続すると思われます。

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フラット35の融資実行金利は1.32%まで上昇

 2つ目は、日本銀行が3月の金融政策決定会合で、金融緩和策の「点検」を公表し、必要に応じて政策に修正を加える可能性が示唆されているからです。修正点の1つとして取りざたされているのが、長期金利の変動幅を現在の±0.2%から±0.3%に広げることです。

 変動幅の拡張に上下はあるものの、緩慢ながらも景気が回復基調にあることを考えれば、低下よりも上昇にバイアスがかかると予測されるのです。悪い金利の上昇ではないのですが、長期金利の上昇はストレートに住宅ローン金利に反映される一方、相当幅の上昇がない限り預貯金金利に反映されることはありません。

 全期間固定金利の「フラット35」を例にあげると、長期金利が過去最低を記録した2016年7月の翌月(8月)に、物件の90%以下の融資額、返済期間21年以上の金利は0.90%まで低下。その後は長期金利の上昇に伴い同金利も上昇、再び過去最低を更新したのは19年9月と10月です。同年7月に長期金利はマイナス0.3%前後まで再低下、フラット35の金利も1.11%まで低下したのです。

 16年当時より0.21%高いではないか! とお叱りを受けそうですが、フラット35は17年10月より団体信用生命保険(通称「団信」)付きに変更され、団信の保険料が金利にプラスされました。その金利が概ね0.22%前後と推測されることから、団信の保険料に当たる0.23%前後を差し引くと、実質のフラット35の金利は0.89%になるのです。その後は長期金利の上昇に伴いフラット35の金利も上昇、21年2月の融資実行金利は1.32%まで上昇しているのです。

 フラット35の金利を含め住宅ローン金利は、毎月新規の融資金利が見直されています。長期金利も上昇基調にあるとはいえ、1本調子の上昇ではなく上げ下げを繰り返しながら景気回復に伴い上昇していくと思われます。とすれば、フラット35の金利も上がったり下がったりを繰り返しつつ上昇していくことが予想されるのです。全期間固定金利を考えているならば、早め早めの手当てが必要になる可能性が高まっている気がしてなりません。

 筆者の予測が外れて、再び長期金利が低下、住宅ローン金利も低下した場合、借り換えなどで対処ができますが、金利の上昇は低下と比べて対処の方法がほとんどありません。フラット35を基準に考えれば、夢よもう一度、実質1.0%未満に適用金利が低下する可能性がかなり遠のいているといわざるを得ない状況です。仮に3月の金融政策決定会合の点検で政策修正がなかったとしても、1つ目の米国金利上昇という要因が残ることをお忘れなく。

(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)

深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。

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