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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

くも膜下出血、運転中に発症して大事故に…50歳頃から要注意、前兆症状が表れたら即受診を

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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写真はイメージです(「Getty Images」より)

 9月11日、東京都千代田区でタクシーが歩行者ら5人を死傷させる事故が起きた。タクシーを運転していた64歳の男性は約16時間後、搬送先の病院で死亡が確認された。報道によると、死因は「くも膜下出血」だったという。

 くも膜下出血は誰にでも起こり得る病気であり、50代以降は特に注意すべき病気である。

 脳は外側から硬膜、くも膜、軟膜で覆われており、くも膜と軟膜のすき間は「くも膜下腔」と呼ばれる。このくも膜下腔には脳血管が走っており、なんらかの原因で出血を起こした状態がくも膜下出血である。くも膜下出血は、わずかな時間で脳全体に広がり強いダメージを与えるため、今回のタクシー事故のように、運転中などに発症すれば悲惨な事故を起こしかねない。

 くも膜下出血の原因の約90%は、脳動脈瘤の破裂である。脳動脈瘤とは、脳内の主要な血管に瘤(こぶ)ができた病態をいう。脳動脈瘤は50歳以降に多く見られ年齢とともに増加していくが、自覚症状がないため、ある日突然、脳動脈瘤が破裂し、初めて脳動脈瘤があったことに気づくケースも少なくない。

 くも膜下出血の前兆症状として、強い頭痛が起きる。「バットで殴られたような強い痛みを感じる」といわれるが、実際には頭痛の強さは人それぞれ異なる。また、急激な血圧の上昇と下降が起きる傾向にあり、それに伴い視力低下、めまい、吐き気・嘔吐、意識の低下といった症状が起きる。こういった症状が現れた後に一度消失し、その後、くも膜下出血が起きるケースが少なくない。したがって、このような症状が現れた際は、速やかに医療機関を受診してほしい。

 前述したように脳動脈瘤とは、脳の主要な血管にできた「こぶ」である。破裂せずに、こぶの状態のままの脳動脈瘤を「未破裂脳動脈瘤」と呼ぶが、50歳以上では2~6%の人が未破裂脳動脈瘤を持っているともいわれる。しかしながら、その未破裂脳動脈瘤を持つ人のなかで、くも膜下出血を起こす可能性は低く、0.02~0.05%と推測されている。必ずしも脳動脈瘤がくも膜下出血に直結するわけではないが、その大きさによって適切な対処が必要となる。

 脳動脈瘤が起きる原因は、はっきりと解明されていないが、外傷によるケースや高血圧、高コレステロール血症、喫煙、習慣的な大量飲酒などが危険因子となる。先天的因子もあり、家系のなかに脳動脈瘤を持つ人やくも膜下出血を起こした人がいる場合は、要注意である。未破裂脳動脈瘤の多くは自覚症状がないため、発見には脳ドックなどで脳の画像診断を受ける必要がある。

 一般的に、5mm以下の脳動脈瘤の場合は経過観察となり、血圧のコントロールをはじめ、過度の飲酒や喫煙など危険因子を極力避けた生活を心がけることが重要となる。5㎜前後以上の大きさの脳動脈瘤については、手術を前向きに検討することが推奨されている。手術も大きさによって適用となる手術の方法が異なるため、医師との十分な相談が必要である。

【手術例】
・脳動脈瘤クリッピング術…脳動脈瘤を金属製のクリップではさみ、瘤の中に血液が入り込まないようにする。全身麻酔下での開頭手術となる。
・脳動脈瘤コイル塞栓術…脳動脈瘤の中にコイルを詰め、瘤の中に血液が入り込まないようにする。全身麻酔で行われる場合もあるが、局所麻酔でも可能であり、大腿の動脈から管(カテーテル)を挿入して行う。

 脳動脈瘤があることを知らずに生活していれば、ある日、くも膜下出血を起こし、最悪の場合、死に至ることもある。50歳を迎える頃から、1年に一度は脳ドックなどの検査をすることをお勧めしたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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