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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

コロナ禍で「ヘッドフォン難聴」が増加…98dBの音量で週に75分以上聞くと難聴の危険

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、我々の習慣は大きく変化した。仕事や学校では、リモートが一般化し、スポーツも感染リスクを避けて単独でのジョギングやウォーキングなどをする人が増えた。そういった習慣の変化に伴い、ヘッドフォンやイヤフォンを使用する人が増えた。

 ヘッドフォン等を使用することによって、どこにいても自分の世界に没頭できるという利点がある一方、増加しているのが「ヘッドフォン難聴」だ。

 ヘッドフォン難聴とは、ヘッドフォン等を使用して大きな音を聞き続けることにより生じる難聴である。ヘッドフォン難聴は少しずつ進行し、症状を自覚しにくいため、気づいたときには難聴がかなり進んでいるケースもある。毎日ヘッドフォン等を使用するという人は、難聴を招く行動をしていないか確認してほしい。

 音の伝導は、耳から入った音が内耳(ないじ)の蝸牛(かぎゅう)という器官にある有毛細胞(ゆうもうさいぼう)で振動から電気信号に変換され、脳に伝わることで「音」として認識される。大きな音を聞くことにより、有毛細胞が傷つき、壊れてしまい、振動を正常に変換することができなくなり、音を感じにくくなる。

 WHO(世界保健機関)は、「80dBで1週間当たり40時間以上、98dBで1週間当たり75分以上聞き続けると、難聴になる危険がある」と注意喚起している。

 ヘッドフォン等を使用する際は、直接、耳に音が入るため、大音量であればあるほど有毛細胞へのダメージは大きい。

 ヘッドフォン難聴の症状としては、耳閉感(耳が詰まったように感じる)、耳鳴りなどが現れる場合もあるが、自覚症状に乏しく、少しずつ聞こえが悪くなっていくケースも多い。症状に気づきにくい理由は、ヘッドフォン難聴の初期症状が、「高い音域が聞こえづらくなる」という点にある。

 高い音域とは「4000HZ」程度の音域であり、普段の生活のなかで、そのような高い音域が聞こえづらくても不便を感じることは少ない。しかし、難聴に気づかずにヘッドフォン等を大音量のまま使い続けることで症状が進行し、会話レベルの音域も聞こえづらくなり、そこでようやく難聴に気づくといったケースもある。有毛細胞の損傷によって失った聴力は回復が難しいため、早期に気づき、治療をすることが重要である。

 ヘッドフォン難聴の治療は、ステロイド剤・ビタミン剤・血流改善薬などの薬物治療が用いられる。また、合わせて耳の安静を図ることも有効であり、ヘッドフォン等の使用をやめる、耳栓などを使用して音から耳を守る等の対処を行い、症状の進行を防ぐことも重要である。

 聞こえにくい、耳の詰まる感じがする、耳鳴りや耳の奥が痛いなど、なんらかの耳の違和感に気づいた時は、早急に耳鼻科を受診し、治療を行うことが推奨される。

 現代社会においてヘッドフォン等は不可欠ともいえるが、ヘッドフォン難聴を招かないためには、次の2点に注意が必要だ。

・なるべく小さい音量で使用:ヘッドフォン等を使用しながらでも人と会話できる程度の音量
・使用時間:1回の使用を1時間以内にとどめ、ヘッドフォン等を使用した3倍は使用しない時間をつくり、耳を休ませる

 また、ノイズキャンセリング機能がついたヘッドフォン等を使用することで過度に大きな音量にすることを防げる効果が望める。疲労、睡眠不足、体調が悪いなど体調不良がある時は難聴になりやすい傾向にあるため、通常よりも音量を下げ、長時間の使用を避けることを心がけてほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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