19日公示、31日投開票予定の衆議院議員選挙に向けて、与野党が事実上の選挙戦に突入する中、立憲民主党関係者が頭を抱えるニュースが立て続けに飛び込んできた。立民の枝野幸男代表が政権交代へ野党共闘を呼び掛ければ呼び掛けるほど、「実際には党内各グループや野党間の対立が深まる」(立民関係者)と不安視する声も聞こえる。
まず一つ目のニュースは、8日、れいわ新選組の山本太郎代表が、次期衆院選で東京8区から野党統一候補として立候補すると表明したことだった。同区には立憲民主党の吉田晴美氏が出馬を予定していたのだが、地元の支援者には党本部から特段の説明はなかったという。東京都議会立民関係者は頭を抱える。
「10日にはJR阿佐ヶ谷駅前で吉田氏の支援者が集結。党幹部や山本氏に対して怒りの声を上げるという事態に発展しました。いくら選挙まで短期決戦で時間がないとはいえ、あれはマズイです。それなりの幹部がちゃんと出てきて、吉田氏と陣営にしっかり説明する必要があったはずです。
結果として、有権者にまた『野党は掛け声だけ。万が一にも大量得票したとして、どうせ内部分裂してグダグダになるんでしょ』と言われかねない。とにかく野党共闘をごり押しするあまり、逆に野党内の対立が深まるように見える選挙戦術はマイナスだと思います」
立民・生方氏は拉致被害者「生きている人はない」発言で炎上
そして2つ目は立民千葉県連代表の生方幸夫氏(衆院比例代表南関東ブロック)が、9月に行われた市民フォーラムで、北朝鮮による拉致被害者について「生きている人はいない」などと発言していたと、産経新聞などに報じられたことだった。被害者家族会は即時、抗議声明を発表。生方氏は11日午前、以下のように自身のツイッターで謝罪した。
「9月の市民フォーラムにおいて、不適切な発言をしてしまいました。発言を撤回するとともに、拉致被害者の家族の皆様及び関係者の皆様にお詫び申し上げます。生方幸夫」(原文ママ)
9月の市民フォーラムにおいて、不適切な発言をしてしまいました。発言を撤回するとともに、拉致被害者の家族の皆様及び関係者の皆様にお詫び申し上げます。生方幸夫
— 生方幸夫 衆議院議員 立憲民主党 りっけん (@ubukatayukio66) October 11, 2021
「分裂と内部抗争ばかりの野党」のイメージ払しょくできるのか
立民の支持母体のひとつである連合系労働組合幹部は語る。
「生方さんは街頭も地道にしっかりやられる方で信頼をしていましたが、FBなどSNS上で、民意とズレているような発言をしていたので少し心配していたのですが……。どのような主張をなさってもかまいませんが、立憲民主党でそれなりの立場にある方なので注意していただきたいです」
例えば生方氏は9月17日、自身のFacebookに以下のような投稿を寄せていた。
「#自民党総裁選挙 の報道はおかしいと指摘した立憲に対し、今日の『#天声人語』は、報道に口を出すのはおかしい、結局、立民こそ菅頼りだったのではないか、と揶揄しました。今日の朝日は総裁選に4ページ以上を割いている。自民党総裁が首相になるとは限らないという前提に立たない報道はおかしい」
前出の組合幹部は話す。
「その投稿に関していえば、確かにマスコミの総裁選報道の過熱ぶりは異常でした。国会の制度上でも、自民党総裁選で首相が選出されるのではなく、あくまで国会での首班指名によって行われます。間違ってはいないのですが、大多数の有権者の考えと致命的にズレている。
自民党総裁が首相になるとは限らない。では、そうならないように野党は連携できていましたか?
首班指名では国民民主党とすら袂を分ちました。もし、本気で首班指名で与党に勝利する気概があったのなら、自民党や公明党を切り崩さなければいけませんよね。そもそも野党が固まっていないのに、実質の伴わない原理原則論を振りかざしたところで、有権者が関心を抱くでしょうか。それこそ、“批判のために批判”と言われておしまいでしょう。
マスコミのみならず多くの有権者が、自民党総裁就任イコール次期首相と考えていたのには、それなりの道理があるのです。とにかく立憲民主党の先生方は、ご自身と周囲のコアな支援者の教条主義的な主張を通すことには熱心なので、内部抗争ばかりしているように国民の目に映っています。
政権交代を目指すのであれば、自分が主張したいことはさておいて、より広く民意をくみ取りに行かねばなりません。東京8区のれいわ山本太郎氏擁立の件もそうですが、一部の支持者のご機嫌を伺うのではなく、しっかり国民の選択肢の受け皿になるような政党運営が今こそ、求められていると思います」
(文・構成=編集部)