甘利幹事長と河野太郎は犬猿の仲?二階議員の総選挙出馬が自民党内でも波紋
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
10月4日、第100代総理大臣に岸田文雄衆議院議員が選出され、新内閣が発足しましたね。かねてより“岸田推し”だった神澤にとっては大変喜ばしいことですが、評価は正直いまいちですよね。
新内閣の閣僚名簿は、前日の18時には固まっていました。ポストが決定するたびにテレビ局がいちいち速報を出していたそうで、それが「うざい」という意見も多かったです。
確かに官房長官や財務大臣くらいならまだしも、すべての大臣の名前を個別に速報されては、ちょっとうるさく感じても仕方ないかもしれません。読者のみなさまはいかがでしたか?
ちなみに、朝日新聞は官房長官を「萩生田光一文科相」と報道してしまい、謝罪文を書かされていました。情報合戦とはいえ、ちょっと先走り過ぎましたね。
甘利幹事長と河野太郎は犬猿の仲?
新内閣はすでに「安倍元総理の傀儡内閣」といわれていますが、実際そうだと思います。9月29日に自民党総裁選の結果が出たときは、「本当に票のコントロールはできるんだなあ」と背筋が凍りました。
前回、「今回のキングメーカーは誰?」というようなことを書きましたが、安倍晋三元首相の勝利でしたね。
一部では「自民党総裁選は、オリンピック委員会の最高顧問になりたかった森喜朗元総理と、それを阻止した菅前総理の争いだった」との指摘もありますが、それは違うと思います。
安部元首相は、最初から岸田議員を首相にするつもりだったのでしょう。そして、森元首相の顔を立てているふり、「過去の疑惑の説明責任を果たす」と明言した岸田議員に怒っているふりをしながら、高市早苗議員を出馬させて河野太郎議員の動きを牽制し、票をうまくまとめていきました。これは「作戦勝ち」ということになります。
以前から岸田議員のために安倍元首相が「暗躍」している気配は感じられましたが、まさかここまでいくとは思っていませんでした。
たとえば、自民党幹事長に就任した麻生派の重鎮・甘利明議員。2016年の“文春砲”で収賄疑惑が浮上し、経産相を辞任した件が、また蒸し返されていますね。
実は、甘利議員が河野議員と馬が合わないことは永田町では有名なんです。甘利議員は、同じ麻生派にもかかわらず、河野議員の出馬が発表されるとすぐに岸田陣営入りし、麻生派の票のとりまとめを行ったともいわれています。もちろん、派閥会長の麻生太郎財務相の了承を得てはいましたけどね。
二階俊博前幹事長と距離があったといわれる甘利議員を幹事長に据えたあたりは、「さすがだな!」と感心しました。安倍元首相が事実上率いる細田派からの抜擢では、また角が立ってしまいますからね。
神澤的には、自民党の役員人事よりも組閣メンバーに関心があったので、自民党役員が発表されたときは「この方たちは内閣には入らないんだな」くらいにしか思っていませんでしたが……。
今回、党幹事長からお役御免になった二階議員は82歳という高齢をものともせず、次の総選挙への出馬を明言されていました。今回、高齢を理由に不出馬を宣言される議員が多い中で、「そろそろ引退したいんだけど、二階さんが引退しないと俺も出ないといけないんだよね」と、渋々出馬される方もいます。出る気もないのに渋々出るって、国民をバカにしていると思いませんか?
松野博一官房長官の“本当の評判”
今回の組閣人事は、とても綿密に全派閥に配慮したメンバーだと思います。いわゆる「長老」という感じの議員は入閣せず、個性の強い方は選ばれていない印象です。みなさん、地道に手堅く仕事をなさると思います。
神澤的には、山口壮議員が環境大臣に就任されたことに驚きました。山口議員は、小沢一郎グループの印象が強いからです。民主党政権で外務副大臣を経験した人が、今度は自民党政権で環境大臣に就任とは、不思議な運を持った人だなと思いました。
官房長官には、元文科相の松野博一議員が就任しましたね。松下政経塾出身で見た目は地味ですが、優しくて明るい性格ですごく人気がある「アニキ」という感じの方です。
また、実は大臣に抜擢されても「貧乏くじを引かされた……」と内心がっかりしている議員もいます。選挙に強い議員ならともかく、ギリギリの攻防を迫られている陣営では、大臣になると選挙区に張り付けないので、選挙戦が不安なのでしょう。入閣は政治家の夢のはずですが、そうとは限らないこともあるんです。
総選挙を急ぐ理由は“小池新党”への牽制?
永田町にとって岸田新首相誕生よりも衝撃だったのは、総選挙の日程前倒しです。
「10月26日公示・11月7日投開票」がほぼ規定路線だったのですが、10月4日の午前中に「10月19日公示・10月31日投開票」との情報が出て、秘書たちはまさに駆けずり回りました。選挙用の機材の準備も前倒ししなくてはならないからです。
めちゃくちゃ大変なので、日程を早めるのは自民党にとっても得策ではないのですが、10月3日に国政政党を立ち上げると記者会見した都民ファーストの会への牽制なのでしょう。
「なんとしても小池百合子都知事には国政に出てきてほしくない」という岸田首相の気持ちの表れですね。今のところ小池知事は新党立ち上げには関与していないとコメントされていましたが、どうなんでしょうか。
まさに選挙は、そして政治は「一寸先は闇」です。まだまだ総選挙の結果は予想できません。11月はどのように国内情勢が変化しているのか、楽しみです。
(文=神澤志万/国会議員秘書)
『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。