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横浜・小学校教諭、生徒へ凄惨なイジメ、市教委が頑なに「イジメではない」と言う理由

文=編集部
横浜・小学校教諭、生徒へ凄惨なイジメ、市教委が頑なに「イジメではない」と言う理由の画像1
「Getty Images」より

 教員による児童への“いじめ”はいじめ防止対策推進法には該当しない――。法制度が現実と乖離している可能性が、あらためて浮き彫りになりつつある。

 神奈川新聞のニュースサイト「カナロコ」は14日、記事『横浜市立小教諭が複数児童にいじめ 第三者委設置し調査』を公開。横浜市教育委員会が、同市内の小学校で担任教諭による複数児童へのいじめがあったことに対し、弁護士などでつくる第三者調査委員会を立ち上げて調査を進めていることを報じた。同記事は次のように報じる。

「3月に児童1人から訴えがあり、発覚した。学校側は6月に緊急の保護者会を開いて説明するとともに謝罪したが、その後、同様の被害を複数の児童が受けていたと判明。調査が十分ではないとして9月27日に第三者委員会を立ち上げた。山中竹春市長は今月13日の定例会見でいじめがあったことを認め、『(最初の学校側の調査が不十分だったので)保護者との信頼関係が崩れていることは認めざるを得ない』と述べた」

配布物を渡さず、二口分しかない給食、テストを受けさせない…

 同記事では触れられていないが、同小担任教員による女子児童への凄惨ないじめの実態は、「文春オンライン」(文藝春秋)が7月8日、前後編で公開した記事『「N先生に連れられ戻ってきた時、涙でビショビショに…」横浜市教諭が小4女児に行った、陰湿イジメの全貌』『《横浜市教諭が小4女児に陰湿イジメ》「教師はイジメに問えない」「異動は人事上不可能」…校長らが両親に告げた言葉』で明らかになっていた。15日午前、Twitter上では「第三者委員会」「横浜市立小教諭」などの言葉がトレンド入りし、横浜市内の保護者を中心に学校や市教委に対する怒りの声が上がった。

 文春報道によると、同小の40代男性のN教諭は、担当するクラスの女子児童に対し、学校通信や学年だより、時間割などの配布物を意図的に渡さなかったり、給食当番の児童に指示して、給食のおかずを二口程度しかもらないようにしたりしたという。

 そのほか、集合写真では端に映るよう指示したことなどを挙げている。また今年3月4日には、女子児童1人だけテストを受けさせない指導もしたという。女子児童は一連のN教諭の行為に恐怖を抱き、適応障害と診断され、保健室登校になってしまった。

 両親は弁護士とともに学校側に一連のN教諭の指導に関して書面で事実関係を問い、処分を求めたが、学校側は「いじめ」「虐待」はなく「不適切な指導」だったとの説明に終始。そのため市教委にも同様に書面を送ったところ、驚くべき回答があったのだ。

先生が行った行為は『いじめ』『虐待』とは言わない?

 文春報道では市教委が両親に伝えた発言内容を次のように報じる。

「しかし2週間後の5月11日、教育委員会の指導主事と面談すると、『先生が行った行為は『いじめ』『虐待』とは言わない。法律上もそうなっている』と言われただけだった。

いじめ防止対策推進法』では加害者を『児童等』に限定しており、『児童虐待防止法』では加害者を『保護者』に限定している。法律上、教諭をいじめや虐待では問えないという理屈を繰り返すだけだったのだ」

 市教委が文春報道にあるような主張をしたのなら、神奈川新聞が報道した市の第三者委員会は、どのような法的根拠で設置されたのか。当編集部の取材に対し、横浜市教委人権教育・児童生徒課長は次のように説明する。

「いじめというより、不適切な指導です。いじめ防止対策推進法はあくまで『生徒・児童間』の行為を規定しています。(今回の第三者委の設置は)地方自治法138条に位置付けられている学校保健審議会という付属機関に部会を立ち上げる形で、第三者から意見を聴取するというものです。

 教員による“不適切行為”があったかなかったかというよりも、さまざまな被害を訴えられる方がいらっしゃるので、まずは事実を調べさせていただきます。当該教員に対してはその報告書をもとに厳正に対処していきますが、(委員会の設置は)再発防止も目的にしております。いずれにしましても市教委としては重大な案件として受け止めているということです」

 つまり、教員による“いじめ”を認定し、第三者委員会が設置されたということではないのだ。児童の保護者から被害申告が多数あったので、一連の紛争処理と調停、調査のため「地方自治法138条の4」を根拠に「執行機関の附属機関」として第三者委員会を置いたということのようだ。

 いじめ防止対策推進法について、文部科学省初等中等教育局児童生徒課の担当者は次のように話す。

「いじめ法で参照すべきは、第2条の定義です。『いじめとは』と記載されている部分に、『一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)』と書いてあり、ここでいう『児童等』というのは児童・生徒を含んでいます。範囲はざっくり言って、『子ども間』ということです。

 不適切指導や体罰などは、各教育委員会または各地方自治体の懲戒処分に関する規定などで対応する話になってきます。少なくともこの法律では、加害側の範囲に教員は入っていないということになります」

横浜市の事例は体罰にもあたらない?

 例えば、教員による体罰学校教育法第11条で以下のように禁止されている。だが、体罰は明確な暴力行為がなければ認定されにくい。明確な暴力行為を伴わない行為で、同法に抵触する可能性のある事例について、文科省は「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」として、次のような事例を挙げている。

○ 被罰者に肉体的苦痛を与えるようなもの

・ 放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室外に出ることを許さない。

・ 別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない。

・ 宿題を忘れた児童に対して、教室の後方で正座で授業を受けるよう言い、児童が苦痛を訴えたが、そのままの姿勢を保持させた。

 今回の横浜市の事案が上記一覧に当てはまるのかといえば微妙だろう。しかし事実として、担任教員が被害児童らに対して耐えがたい精神的な苦痛を与え、心身の不調をきたさせ、結果的に不登校にしてしまったことは人権侵害以外のなにものでもないはずだ。現行の法制度に不備はないのか。あらためて議論が必要ではないだろうか。

(文=編集部)

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