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「経済的困窮」よりも…コロナ禍で大学中退者が続出、その意外な理由

文=Business Journal編集部
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東京大学安田講堂
東京大学安田講堂(撮影=編集部)

 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で「大学、専門学校などを中退する学生が増加している」などという指摘がマスコミで取り上げられ始めてしばらく経つ。政府や自治体による緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の実施で、飲食店の休業が相次ぎ、学生らがアルバイトで生活費を稼ぐ場所が激減。コロナ禍が深刻化した当初は「経済的な困窮」を理由に学校を中退しなければならない学生が頻繁にメディアにクローズアップされた。それから2年余りが経過し、コロナを理由に中退する学生は依然として後を絶たない。しかし、その理由は少しずつ変わってきているようだ。

中退理由のトップ「留年したから」?

 教育研修事業・就職支援事業を展開するジェイックは2日、『2021年度中退データ』を発表した。同調査で中退理由のトップは「留年したから」だったという。

 調査は、同社の中退者向け就職支援サービス受講生を対象にインターネットアンケート形式で行われた。昨年4月1日から今年3月31日の間に、424人から回答を得た。この中で中退理由は「留年したから」が35.2%でトップ。次いで「授業内容に興味が持てなかったから」が23.7%、「授業についていけなかったから」が13.7%、経済的事情・家庭問題は13.4%という結果になったという。

 奨学金の受給状況では「借りていない」が53.9%で半数を超えた。「留年したことがあるか」との質問では「留年をしたことがある。もしくは留年が確定した」が58.2%という結果だった。留年理由については「授業内容に興味が持てなかったから」が最多の36.1%、「授業についていけなかったから」が29.8%だった。

 また大学や専門学校への進学理由では、「なんとなく・親や先生に言われて・進学するのが当たり前だと思った」が最多の41.4%、「就活に有利になると思った」「教養を身に着けたい・勉強や研究をしたいと思った」が同率の20.6%、「学歴がほしかった」が14.7%だったという。

文科省調査でも最多は「学生生活不適応・修学意欲低下」

 似たような数字は文部科学省が今年3月1日に発表した『学生の修学状況(中退者・休学者)に関する調査【令和3年12月末時点】【大学・高等専門学校】』でも見られた。同調査結果によると、2021年度4月~12月の中退者実人数は2万9733人(前年同期2万8647人)だったという。ちなみにコロナ禍前の19年度同期の中退者実数は3万6016人だった。

 前述の2万9733人の中で「コロナを理由とした者」は1937人(前年度同期1367人)となり、20年度比570人増で1.4倍となった。その内、中退理由で最多となったのは「学生生活不適応・修学意欲低下」が30.3%(前年度同期比10.3ポイント増)で大きく増加した。一方で、「経済的困窮」は8.2ポイント減少し19.9%という結果になっていた。

東大にも留年→中退者はいる?

 “全国で最も中退率の低い大学”などと言われる東京大学にも中退者はいるようだ。東京大学大学院経済学研究科修士課程の男子学生は語る。

「私が学部生時代から出入りしているサークルでも、学部は違いますがこの2年間で中退した学部生が1人いました。コンパなどの交流の機会が激減したこともあり、実際に会ったことのない学部生はかなりの数に上ります。中退した学生もその一人です。

 そのため、コロナ禍が中退の理由だったのかはわかりません。昔から(教養学部のある)駒場から本郷(本部キャンパス)に進級する際、必修単位の関係で留年し、中退する学生はいるものです。コロナ禍前だったら『あの人はどうして中退してしまったのか』という話題が知人の間で広っていたでしょう。そういう噂話すら聞こえてこなくなるくらい、学生間のつながりは薄くなっていると思います」

 一方、東京都内の大手私立大学学生課関係者は現状を次のように見る。

「コロナ禍が始まったころ、『学生は経済的に困窮している』『サークル活動ができず孤独を感じ、オンライン授業のため適切な学習環境が確保できていない』などという報道がたくさんありました。確かにそういう事例も少なからずあります。コロナ禍でお金が足りず、オンライン授業などで強い孤独を感じ、学校生活がうまくいかないのであれば、国も学校もちゃんと修学できるよう支援しないといけません。

 ですが、『すべての学生が苦学生で孤独を感じていた』というと少し首をかしげるところもありました。留年しても中退しないだろうなと思う学生は中退しませんし、コロナ禍であろうとなかろうと、留年して中退しそうな学生は中退します。

 中退者が出てしまう背景にあるのは、“大学全入時代”と言われるようになってから一層顕在化した『学校と学生のミスマッチ』だと思っています。その学校で学びたい学問や教わりたい教員、関係を築きたい学生がいたり、就きたい職業のビジョンがあったりする学生はコロナ禍であっても大学に残り続ける傾向にあります。独自に教員と連絡を取って話を聞いたり、SNSなどを積極活用して学内に友人をつくったりしているようでした。

 大学は学生自身が動かなければいけないところがあります。入学さえすれば、自動的に学習や研究ができるわけでも、友人ができるわけでもありません。思わぬ人生の回り道をしないように、学力的に“入れる大学”に行くのではなく、高校時代からやりたいこと、学びたいことを見つけて大学を選ぶことが大切だと思います」

(文=Business Journal編集部)

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