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永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報

安倍元首相の国葬があらゆる面で残念だった理由…国会議員秘書が当日の裏側を暴露

文=神澤志万/国会議員秘書
安倍晋三元首相(「gettyimages」より)
安倍晋三元首相(「gettyimages」より)

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 臨時国会が10月3日から始まりました。開催期間(会期)については、まだ与野党の攻防が続いていてわかりませんが、おそらく12月上旬くらいまでになると思います。北朝鮮の弾道ミサイル連続発射問題やロシアのウクライナ侵攻、円安、物価高と課題は山積ですから、議員はもちろん国会女子たちも気合いはバッチリですよ。

国葬問題で岸田政権の支持率は急落

 9月27日、安倍晋三元首相の国葬が行われました。実施については賛否が分かれ、9月に行われた報道各社の世論調査では、岸田政権への支持率が軒並み10ポイント以上急落しました。読者のみなさんはどう思われましたか?

 この支持率ですが、「政権」への支持率は下がっても、「政党」への支持率、特に自民党に対しての支持率には影響が少ないんですよ。もっとも、反自民党の読者が多いとされる毎日新聞の調査では、自民党への支持率も6ポイントほど下がっていました。

 神澤的には、国葬は開催してほしいし、すべきだと思っていました。哀悼の意を表すのは、人として至極当然のことです。でも、いかんせん準備不足で、党内からも批判が出てしまいました。

 戦後初となった1967年の吉田茂元首相の国葬から55年ぶりの国葬なのですから、岸田文雄首相以下、みんなが初めてのことでした。だからこそ、前例を重視して丁寧に進めた方が今後のモデルケース、ガイドラインとなったはずです。

 参議院選挙後に行われた臨時国会をたった3日で終わらせず、国葬を行うべき理由を丁寧に議論し、自民党と旧統一教会の関係についても国会で議論してほしかったです。その様子を放送すれば、国民の理解も得られたのではないでしょうか。

 そもそも「開催の理由」に説得力がありませんでした。岸田首相は、安倍元首相の「在職期間の長さ」「内政や外交の実績」「国際社会からの評価」「蛮行による逝去への哀悼」の4つを挙げていましたが、そもそも「実績のない総理」はいませんよね。

 たとえば、ノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作元首相は、当時最長の在任期間でしたし、戦前までは高橋是清や斎藤実など凶弾に倒れた宰相もいましたよね。「なんで安倍さんだけ?」と思われない説明が必要でした。

 ちなみに、佐藤元首相は吉田元首相の国葬を仕切っています。訃報はフィリピンのマニラで聞き、すぐに官房長官に国葬として対応するように指示を出したそうです。

 園田直衆院副議長にも直接電話して「法的根拠がまだ整備されていない中での国葬の儀になる」と、当時の野党第1党の社会党の了承を得るようお願いしたそうです。園田副議長は、熱い思いを受けて、その日のうちに社会党を説得しています。急遽帰国した佐藤総理は、すぐに閣議を開き、国葬の日程などを決定していますが、当時は共産党以外からはまったく反対の声が上がらなかったとか。

 当時とは単純に比較できませんが、今回はせっかくの追悼なのに、みなさんの気持ちがまとまらなかったのは寂しいですね。「安倍さんは好きだし、事件は気の毒だと思うけど、国葬には反対」という声もありましたから。

飲めたのはお水だけ

 安倍元首相国葬は、国会女子から見ても残念でした。プロセスもですが、スケジュールも残念だったんです。国会から会場の日本武道館周辺は交通規制が強化されていたので、議員たちはバスでの移動でした。テロ対策なので仕方ない面もありますが、国会から会場まではバスで10分足らずなのに、集合は正午、開催は14時からでした。

 会場内には飲み物を持ち込めないので、お昼ごはんをどうするか悩んでいる秘書たちもいました。しかし、ほとんどの議員は「早めのランチ」は無理だったみたいで、待機から終了までの間に口にできたのは、配られたペットボトルの水1本だけでした。終了後、17時過ぎになって「おなかすいたー」と国会に帰ってきていました。たかがお昼ごはんかもしれませんが、もう少し何とかならなかったのでしょうか。

 ちなみに参列者は会場内でじっとしていたので、会場外の献花の行列や国葬反対のデモ行進はまったく見ていないそうです。

原稿棒読みだった岸田首相と菅前首相の差

 批判される理由のひとつとして、岸田首相には安倍元首相に対する熱い思いが足りなかったのではないでしょうか。岸田首相の「俺が国葬と決めた。浅慮だった」などという発言が報道され、腰が引けているという印象がぬぐえません。

「安倍元首相にはそれほど功績がなかった」とか「血税30億円はひどい」とかいうのは、世論の後づけの反対理由だと思います。野党や世間の批判に岸田首相が熱い思いで反論していたら、また風向きは違っていたでしょう。弔辞も、涙を流すでもなく、「原稿棒読み」と言われていましたね。

 これに対して、友人代表の菅義偉前首相は「二人のエピソード」を紹介するなど心のこもったスピーチで、SNSでも話題になっていましたね。

 まあ終わってみれば大きなトラブルもなくてよかったですが、国葬をめぐって政権の支持率が下がり、自民党内のまとまりも悪くなってしまいました。求心力を失った岸田政権は、臨時国会でどのように重要法案を議論するのでしょうか。何か奇抜な政策で一発逆転に期待したいところですが、まじめな岸田首相には難しいかと思います。

 少なくとも旧統一教会問題で「嘘をついた」閣僚は即退散させて、フレッシュで期待できる内閣を作っていただきたいです。安倍元首相銃撃事件の背景には、自民党と旧統一教会の関係がありますよね。それなのに、8月の内閣改造では旧統一教会と関係のある閣僚を排除しきれませんでした。それだけ自民党と旧統一教会との関係は深いのに、岸田首相は無関係だったせいか、あまり厳しく追及していません。

 もっとも、内閣改造では事前に旧統一教会との関係を全閣僚に申告させたのに、「後出し」で報告したり、外部からの指摘で修正したりする閣僚もいました。そういう閣僚はスパッと交代させるべきだったと思います。ずっと甘い対応を続けてきたせいで、支持率低下につながってしまいましたから、今後の対応が注目されます。

『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。 amazon_associate_logo.jpg

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