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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

ひたすら上昇続けたマンション価格、ついに下落開始…住宅購入・買い換えなら今か

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 住宅価格の上昇が続いているいまは、マイホームを売却して買い換えするには大きなチャンスのときですが、いつまでも住宅価格が上がり続けるとは限りません。首都圏の新築マンション価格が下がり始めるなど、不安な要素も表れているので、行動するなら早めのほうがいいかもしれません。

プラスの売却差額が出ている人が6割近くに

 大手、中堅の不動産仲介会社の業界団体である不動産流通経営協会では、毎年「不動産流通業に関する消費者動向実態調査」を実施しており、このほど、その最新版である2022年度版の結果が公表されました。

 そのなかに、マイホームの買い換えを行った人を対象とした、売却時の売却差額に関する調査項目があり、図表1がその結果です。6年前の2016年度に買い換えした人では、自宅を買った価格より低く売らざるを得ず、「マイナスの売却差額が発生」とする人が66.4%と、ほぼ3人に2人に達していました。それが、マンション価格の上昇、とりわけ中古マンション価格の上昇にともなって、「プラスの売却差額が発生」とする割合がジワジワと増えてきました。2022年度には58.4%と、6割近い水準に達しています。

 購入価格より高く売れれば、住宅ローンが残っていたとしても、残高を一括返済しても手元に一定の金額が残るはずです。それを自己資金にすれば、想定していた住宅より、満足度の高い住宅への買い換えが可能になるのではないでしょうか。

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(資料:不動産経済流通協会「不動産流通業に関する消費者動向実際調査(2022年度)」)

2022shouhisha_doukou.pdf (frk.or.jp)

中古マンション価格は9年間で6割も上昇

 それもそのはずで、中古住宅価格はこの数年上がり続けているのです。新築住宅が土地価格や建築費の高騰などもあって、適正価格での供給が難しくなり、物件数が減っているため、中古住宅の人気が高まり、中古住宅価格が新築以上に上がっています。

 図表2は、東日本不動産流通機構による首都圏中古マンションの成約価格の推移を示していますが、2011年度に前年度比マイナス2.5%になったのを最後に、2012年度は前年度比プラスマイナスゼロで、2013年度以降は9年間上昇が続いています。2012年度には2515万円だったものが、2021年度は3949万円ですから、その間の上昇率は57.0%に達します。

 中古一戸建てについても、ほとんど同じようなことがあてはまり、2013年度には成約価格の平均が2920万円だったのが、2021年度には3524万円に上がっています。その間の上昇率は20.7%です。中古マンションほどの上昇率ではありませんが、それでも極めて高い上昇率であるのは間違いありません。

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(資料:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2021年度)」)

sf_202104-202203.pdf (reins.or.jp)

首都圏の新築マンション価格が下がり始めた!

 しかし、そんな恵まれた環境がいつまでも続くとは限りません。これまで上がり続けてきた住宅価格に、変調の兆しが見られるようになってきているのです。図表3をご覧ください。これは、不動産経済研究所の調査による首都圏の新築マンションの平均価格の推移を示しています。各年度の上半期の平均価格ですが、2021年度上半期には6702万円になり、2020年度上半期の6085万円に対して、10.1%のアップでした。

 それが2022年度上半期は6333万円で、2021年度の6702万円から5.5%のダウンです。上半期だけの集計とはいえ、これまでひたすら上がり続けた新築マンション市場に異変が起こっていることを示しているのではないでしょうか。

 新築マンション価格は高くなりすぎて、購入できなくなっている人が多いのではないかと思われます。市場経済では、価格は需要と供給のバランスで決定されます。高くなりすぎて、需要が追いつかなくなれば、価格が下がるのは当然のことです。

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(資料:不動産経済研究所ホームページ)

https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/523/2249sk.pdf

<92CA904D32303231944E93788FE38AFA94AD955C977082CC955C2E786C7378> (fudousankeizai.co.jp)

2049sk.pdf (fudousankeizai.co.jp)

<92CA904D32303139944E93788FE38AFA94AD955C977082CC955C2E786C73> (fudousankeizai.co.jp)

<92CA904D32303138944E93788FE38AFA94AD955C977082CC955C2E786C73> (fudousankeizai.co.jp)

東京の新築マンションの年収倍率は14.69倍

 いかに高くなりすぎているのか、東京カンテイの「年収倍率調査」をみると明らかです。東京カンテイの「年収倍率調査」は、各都道府県で分譲された新築マンション価格(70平方メートル換算)を、その都道府県の平均年収で割って算出しています。その最新の2021年版によると、全国平均の70平方メートル換算のマンション価格は4056万円で、全国平均の年収は454万円なので、年収倍率は4056万円÷454万円で8.93倍になります。

 47都道府県のなかで年収倍率が最も高いのは、いうまでもなく東京都で、2021年には14.69倍に達しました。70平方メートル換算価格が8373万円で、年収が570万円です。これでは、平均的な会社員ではとても手が出せません。東京のマンションは富裕層、高額所得者のほか、共働きのパワーカップルでもない限り買えなくなってしまったといっていいでしょう。

 富裕層、高額所得者、夫婦ともに年収の高いパワーカップルがそうそういるわけありませんから、東京のマンションが売れなくなって、価格が下がり始めるのは当然のことです。

近畿圏の新築マンション価格もほぼ横ばいに

 問題は、この流れが東京の新築マンションだけではなく、全国に広がっていくのか、また中古マンションや一戸建てにも広がっていくのかという点です。これまで、住宅価格の上昇や下落は、まず東京の都心から始まり、それが都心の周辺や大阪、名古屋の中心部に広がり、やがて都心の郊外部、地方都市の中心部、そして全国に広がっていくというのがふつうでした。そのパターンを今回も引き継ぐとすれば、首都圏の都心部で始まった新築マンションの価格低下が、首都圏の周辺部に広がるかどうかが問題です。

 先の不動産経済研究所の2022年度上半期の新築マンションのデータをみると、実は東京都区部だけではなく、東京都下も下がり始めています。周辺三県はまだ上がっていますが、上昇率は低くなっています。一方、近畿圏をみると、2022年度上半期の新築マンション平均価格は4567万円で、前年同期比0.6%の上昇です。この数値なら上昇というよりは、実質的には横ばいであり、東京ほど鮮明ではないにしても、これまでの上昇ぶりからすれば、変化の兆しとみてもいいのかもしれません。

価格が下がり始める前に行動を起こすべきときなのか

 近畿圏も、いつ低下に動いても不思議ではありません。首都圏と同様に、まずは大阪市部や阪神間などの価格の高いエリアから下落の流れが始まるのかもしれません。不動産の価格は、市場メカニズムだけではなく、思惑で動く部分が大きいので、動くときには一気呵成に動く可能性もあります。需給関係以上に急速に展開することが少なくないのです。

 実際にどうなるのかは予断を許しませんが、これまでの一本調子の上昇に変化の兆しが見られるようになったことは間違いありません。価格が下がり始めてからでは間に合わない可能性あるので、その動きをできるだけ早くキャッチして、迅速に行動を起こせるようにしておいたほうがいいかもしれません。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド2021~22


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