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「ステルス値上げ」はロピア&オーケーらが原因か…メーカー側の値上げを許さず

文=Business Journal編集部、協力=渡辺広明/消費経済アナリスト
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お菓子のステルス値上げは販売店の意向か…値上げを拒否する4大小売店とはの画像1

 原材料価格や原油価格、物流費などの高騰を受け、食品やサービス、電気・ガスなど、生活にまつわるさまざまな分野で値上げラッシュが続いている。帝国データバンクによると、2023年7月単月の飲食料品の値上げ品目数は3566品目で、今年の値上げ品目数はすでに昨年1年分を超え、今月中に3万品目に達するとみられる。

 収入が大きく上がらないにもかかわらず物価だけが上昇を続けていることで、国民の家計は圧迫されている。そんななかで話題となっているのは、“ステルス値上げ”だ。商品の価格は変わらないまま、消費者にわからないように内容量が減らされている状態を指す言葉で、知らずに購入した人はだまされたように感じるだろう。

 だが、このステルス値上げはメーカーの意向ではなく、販売店の意向が反映されたものであるとの告発が話題になっている。

 6月25日にTwitter(現X)上で、ステルス値上げされたチョコレートを見て日本経済の停滞を憂うつぶやきがあった。その内容は「日本の没落をこのチョコレートのパッケージが示している。本来12個入っているはずなのに10個しかない。減少分をデザインで巧妙に隠しているのである。問題はあらゆる分野において同様の『偽装』が行われていることである。日本は静かに沈んでいる」というものである。

 このツイートは瞬く間に拡散され、表示回数600万回超、「いいね」2.9万回など、大きな反響を呼んだ。多くのコメントが寄せられたが、そのなかに菓子メーカーに勤務するという人物から、「本当は容量そのままで値上げをしたいのです。しかし販売店は絶対に認めません。減量してでも値段を据えとかないと取り扱って貰えないのです」とのリプライがあった。

 確かに、昨今はステルス値上げを嫌う消費者も多く、潔く値上げしたほうがいいとの声も頻繁に聞かれるようになった。2016年には日本国民定番の氷菓ともいえる「ガリガリ君」を製造する赤城乳業が、1本あたり60円から70円に値上げする際に会長以下社員100名以上が頭を下げる広告を出したところ、「誠意を感じる」と好意的に受け止められ、売り上げは前年比で大幅に伸びた例があった。

 原材料や物流費の高騰が続くなか、企業努力では賄いきれない、といった理由を明確にしめせば、歓迎はされないとしても値上げについて消費者に一定の理解を得ることは可能なのではないだろうか。

 なぜ販売店側は値上げを拒否するのか。なぜ菓子メーカーは販売店の言いなりになってステルス値上げを行うのか。その裏側を消費経済アナリストの渡辺広明氏に聞いた。

――最近始まったことではないですが、ステルス値上げが続いているのはなぜでしょうか。

渡辺「内容量はそのままで値段が上がるのと、値段はそのままで内容量が減るのと、どちらがいいのかという問題ですが、値段はそのままで内容量が減るほうがいいと考える消費者のほうが多いとメーカーが判断して、この対応になっていると考えられます。Pontaリサーチの調査によると、給与所得者のうち給料が上がっているのは約3割しかいないので、値段が上がることに抵抗があるのではないでしょうか」

――特にお菓子に関して、ステルス値上げが多いように思えます。

渡辺「お菓子は嗜好品なので、特に値段が上がってほしくないと考える方が多いようです」

――この傾向は続くのでしょうか。

渡辺「去年はエネルギーや物流費の高騰などもあり、さまざまなものの値段があがりましたが、今年はやや落ち着いています。しかし、地政学上の懸念も払拭できず、給料をアップしたメーカーはその利益マイナス分の価格転嫁も考えられ、かつ原材料費の高騰は続いています。そんななか、小売業は値上げを受け入れる傾向にあります。なぜ値上げを受け入れ始めたかといえば、単価が上がっているからです。

 複数のメーカーにヒアリングしたところ、値上げを受け入れていないのは、ロピア、オーケー、コスモス薬品、トライアルといったディスカウント系ストアです。特にこの4社が、値上げを受け入れてくれないとの話も多く聞きます。消費者にとっては助かる状況ですが、値段が上がらないということは、従業員の給料は上がらず、商品を卸すメーカーや物流業者にとっても売り上げも上がらないという負の連鎖につながります」

――販売店が値上げを受け入れなければ、やはりメーカーは値上げをすることができないのでしょうか。

渡辺「メーカーよりも販売店のほうが力関係は圧倒的に強いので、販売店が受け入れなければ値上げは難しいと環境となります。消費者は値段が安い小売店を称賛しますが、それは本当に販売店の企業努力といえるのでしょうか。販売店自身がコスト削減をする場合を除けば、メーカーの値上げ要請を断ることは企業努力ではないと思います。そういう意味で、値上げを受け入れていない小売店は、経済成長を阻害する一因をつくっているともいえるでしょう」

――消費者からすると、内容量が減ること以上に、パッケージが変わらずにいつの間にか減っている、という状況がメーカーに対する不信感を募らせる要因になっているように思えます。

渡辺「確かに、本来は『原材料高騰のため内容量が減りました』と堂々と告知すべきです。パッケージに記載しないとしても、メーカーのHPに記載するべきです。それをしないメーカーは消費者の不興を買うのです」

――ステルス値上げは、消費者を欺く行為だといえますね。

渡辺「きっちり告知をしないで値上げするメーカーは、いずれ淘汰されていくでしょう。便乗値上げするような企業も生き残れないと思います」

 パッケージデザインなどで功名に内容量の減少を隠すような食品が多々あるが、いまやSNSの普及もあって、消費者に簡単に暴かれるようになった。かつて赤城乳業が同社の人気アイス「ガリガリ君」を10円値上げする際、値上げをテーマにした歌などと共に、社長以下従業員100人以上が頭を下げるテレビCMを出し、大きな話題となった。ここまでする必要はないとしても、消費者を欺くような手法は避けてほしいところだ。

(文=Business Journal編集部、協力=渡辺広明/消費経済アナリスト)

渡辺広明/消費経済ジャーナリスト

渡辺広明/消費経済ジャーナリスト

コンビニの店長、バイヤーとして22年間、ポーラ・TBCのマーケッターとして7年間従事。商品開発760品の経験を活かし、現在 (株)やらまいかマーケティング代表取締役として、顧問、商品開発コンサルなどに多数参画。報道からバラエティまで幅広くメディアで活動中。フジテレビ「Live News a」レギュラーコメンテーター。 「ホンマでっか⁉︎TV」レギュラー評論家。『ニッポン経済の問題点を消費者目線で考えてみた』『コンビニを見たら日本経済が分かる』等著書多数。

Twitter:@yaramaika

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