楽天の三木谷浩史会長兼社長は8月8日の楽天グループの決算会見で「基地局の整備は10月には完全に間に合う」と強気の姿勢を貫いた。だが、総務省は10月1日の基地局の設置数は目標に達成できないとみている可能性がある。
クラウド技術を全面採用した通信ネットワークを世界で初めて運用する。想定外の障害に備えて「サービスを段階的に広げていく」(三木谷氏)としているが、総務省の不安が的中した格好だ。
異例の3度目の行政指導に踏み切った背景には、「利用者の期待に楽天・楽天モバイルは応える必要がある。公共の電波を利用する責務を果たしてほしい」との強い思いが込められている。
では、楽天・楽天モバイルは、当初計画より大幅に限定したサービスの内容を、いつ発表するのか。そこに料金プランが含まれるのかなど、先行きは流動的だ。
先行する3社は、10月1日に施行される改正電気通信事業法と関連する改正総務省令と、楽天の料金プランの両方に対応した自社の料金プランを練っている。楽天は、プランの発表が遅れると、戦略の練り直しが必要になるだろう。
楽天の株価は8月28日、前日比6.6%安の928円まで大幅に続落した。携帯電話の第4のキャリアになる前に売り圧力が高まっている。ただし、30日の終値は1001円と、1000円台を回復した。
8月28日、auは2年契約を途中でやめる際の違約金を従来の9500円から1000円に引き下げると発表した。総務省が10月に導入する携帯電話料金新ルールをまとめ、違約金の上限を1000円としたためだ。利用者が携帯会社を乗り換えやすくする狙いがある。
既存のキャリアからの利用客の流出について、当初の想定より少なくなるとの見方が台頭していることも、先行3社にとっては“追い風”となる。
ドコモは8月28日、2666円(52.5円高)と年初来高値を更新。30日には一時、2687.5円まで上昇。さらに、年初来高値をつけた。KDDIも28日に7月高値にあと1.2%と迫る2879円をつけた(7月12日の高値は2914.5円)。KDDIの30日の高値は2858円。
8月28日、KDDIと楽天は日経平均寄与度のプラスとマイナスでそれぞれ上位に顔を出した。携帯電話事業をめぐり、明暗が分かれた格好だ。
(文=編集部)