先日馴染みの床屋さんに出かけたところ、いつもいた女性理容師さんの姿が見えない。ご主人に尋ねたら、少し寂しげに「QBハウスに勤めました」という。「20年選手で腕も確かだったのですが、シャンプーで手がかぶれるのがひどくなって」という。「10分カット1000円(税込み1080円)」を売りにしているQBハウスなら、カットだけなので手が荒れるようなこともないという。私の白髪染めなどを達者にこなしてくれていた女性の転出が少し意外だった。というのは、なんとなく「1000円カットのQBハウスはスピードこそ速いものの、技術的にはどうなのか」という先入観があったからだ。
新社長が技術尊重に舵を切った
QBハウスを運営するキュービーネット社は1995年に創立されて、現在国内に489店舗、海外に100店舗を展開している。来店客数は年間1500万人を越えるという、理容美容業界では大手にのし上がった。
「10分間でヘアカットだけ」「1000円」というビジネス・モデルは創業者の小西國義氏が編み出した。現社長の北野泰男氏は2005年に入社、前職は日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)というバンカーだった。09年に社長に就任している。
「私自身は技術者ではなく、完全にビジネスマネジメントの面からこの事業に携わっている」(「季刊MS&コンサルティング 2013年夏号」)と、プロ経営者として自負する北野社長はスタイリストと顧客、両方の満足に対してさまざまな手を打ってきた。「スタイリスト」とは、理容技術者に対する同社呼称だ。
社員満足を向上させるには、スタイリストをプロの技術者として尊重し、育成するということだった。前述した私がお世話になった女性のように手荒れなどの問題を抱えていた理容師も活躍できるし、国家資格を取ったのに現場に出ていなかった理容師には、1日8時間のカットスクールを有給で講習している。年に1度の社内イベント「QBカットコンテスト」では、全国2000人以上の頂点を目指してスタイリストたちがカット技術を競う。
これらの施策の結果、以前は50%だったターンオーバー(離職率)が12%までに下がったという(4月6日付キャリコネニュース記事より)。
真骨頂が、9月に発表された15年度「JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)」第3回調査(サービス産業生産性協議会)の生活関連サービス部門で1位に輝いたことだろう。
この調査について実は私は、7月に疑問を投げかけた。