セブンにマック、コーヒー強化でスタバ、ドトールに挑む…純喫茶も新参入で競争激化
アドバンテッジは投下資金を回収するため2012年12年7月、外食産業やファンドにコメダの買収を呼びかけ、複数回の入札を経てMBKが優先交渉権を得た。買収総額は負債も含めて430億円。
コメダ珈琲店は1968年、加藤太郎氏が名古屋市で個人経営の珈琲店として開店。コメダという名前は実家が米屋だったことにちなむ。70年から、郊外型のフルサービスの純喫茶として東海地方を中心にフランチャイズ(FC)展開。93年にFC本部の株式会社、コメダを設立。2008年に全国展開を目指してMBO(経営陣が参加する買収)を実施、アドバンテッジやポッカコーポレーション(現ポッカサッポロフード&ビバレッジ)が資本参加した。
店舗数はコメダ珈琲店が465店、甘味喫茶おかげ庵7店(12年11月末時点)。12年2月期決算(単体)は売上高90億円、営業利益22億7600万円、売上高営業利益率は25%を記録した。FC店を含めた全店舗の売上高は320億円である。
“喫茶店王国”といわれる名古屋で、コメダは圧倒的な店舗数を誇る有名店。メニューは焼き立てのデニッシユの上にソフトクリームが乗ったシロノワールのほか、みそカツサンドなど名古屋色が満載。回転率を求めるセルフ式カフェと逆で「長居大歓迎」。お客の平均滞在時間は1時間以上。常連客100人以上の好みを記憶しているカリスマ店長がいる店もある。
この名古屋式純喫茶ビジネスの全国展開に乗り出したのが、安田隆之・代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)兼COO(最高執行責任者)(52)。京都生まれの神戸育ち。兵庫県立長田高校を卒業し、中央大学法学部に進学。卒業後は大学院に進み修士となる。86年大手石油会社モービルに就職し、44歳まで勤務。05年、日本マクドナルドHDに入社。総務、人事、広報などを統括し、取締役上席執行役員として上級経営会議にも参加する立場となる。
11年6月、日本マクドナルドHDを退職。アドバンテッジにスカウトされ、同年9月、顧問としてコメダに入り、10月から社長に就任。マクドナルドで培ったノウハウを生かして関東、関西への出店の舵取りを任された。MBKによる買収を機に、出店ペースを加速させ、国内1000店舗の実現を急ぐ。
コメダを買収したMBKは05年、米投資会社カーライル・グループのアジア地区担当幹部6人によって設立された、日本、韓国、中国を拠点とする投資ファンド。日本では、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの運営会社や田崎真珠、インボイスなどへの投資実績がある。今後は、近隣のアジア諸国で純喫茶ビジネスの展開を進めるという。
東京都心を中心にビジネスマン向けの喫茶店「ルノアール」を直営店方式で110店舗を運営する銀座ルノアールは1月28日、コーヒー豆の輸入販売大手、キーコーヒーの傘下に入った。ルノアール株の21.28%を保有する筆頭株主で創業者の資産管理会社、花見煎餅が同日、6億円で全株式を売却、キーコーヒーの完全子会社になったためだ。花見煎餅はオーギュストに商号変更。ルノアールはキーコーヒーの持ち分法適用会社になった。
銀座ルノアールは“昭和の喫茶店”の代名詞として知名度は高かったがドトールやスターバックスなどセルフ式カフェに客を奪われ、苦戦が続いていた。12年秋、キーコーヒーと資本・業務提携して出店手法を多様化した。従来型の直営喫茶店に加え、今後はセルフ式カフェのフランチャイズ店を増やす一方、新業態の純喫茶を全国展開する。