岡田元会長の持ち株会社代表復帰に疑義あり
ただし、多くのマスコミが記事化しなかった最大の理由は別にある。岡田元会長の発言に疑問点が多く、到底、ユニバーサルへの復帰は絵空事としか映らなかったからだ。
会見の内容を振り返りながら検証してみよう。
ユニバーサルは岡田元会長が創業者で、岡田一族の資産管理会社のオカダホールディングスリミテッド(OHL)が株式の69.02%を保有する完全オーナー会社だ。
そもそもOHLは相続税対策としてつくったもので、現在のOHLの持株比率は、岡田元会長が46.4%、岡田元会長の長男である岡田知裕氏が43.5%、長女の岡田裕実氏が9.8%保有している。知裕氏と裕実氏はユニバーサルに勤務しておらず、岡田元会長に経営をすべて任せていた。
しかし、岡田元会長による会社の私物化と思われる行為が発覚したことから、知裕氏と裕実氏は共闘して岡田元会長をOHLの代表から排除。さらに、6月にはユニバーサルの会長を解任する株主提案を出して、総会で可決され、岡田元会長は追い出されている。
岡田元会長の説明によると、その後、裕実氏とは再び交流を開始して和解し、裕実氏は岡田元会長を支持するようになったという。2人のOHL持株比率を合計して過半数になったことから、OHLの臨時株主総会を開き、岡田元会長はOHL代表に復帰した主張する。
しかし、この説明がどこまで本当なのかは不透明だ。
まず、知裕氏側の関係者は、「それはありえない話」だと一蹴している。
「裕実氏が保有する株式の議決権は知裕氏に渡っており、元会長が裕実氏と和解したとしても、議決権を取り戻すことはできない」(知裕氏の関係者)
実は、知裕氏は裕実氏と信託契約を交わしており、議決権を譲り受けいる。契約では、裕実氏側からは破棄できない内容だ。信託契約は公証人が見守る中でサインしており、これを覆すことはほぼ不可能だ。
また、岡田元会長が開催したと主張するOHL臨時株主総会は、開催されていなかった可能性すらある。株主総会日として指定された9月8日、知裕氏の代理人弁護士は、臨時株主総会への出席を試みたが、岡田元会長の関係者は弁護士を会場に入れなかったという。
弁護士によると、開催時間前に臨時株主総会の会場として指定された場所に赴き出席を試みたが、岡田元会長の関係者は「すでに終了した」などと説明して会場に入れなかったという。臨時株主総会はそもそも開催されておらず、総会自体が成立していない可能性が高い。
現在、香港に本社があるOHLの会社登記簿は、変更届けが出されているものの、まだ中身が開示されていないので役員構成が変わったのかはわからない。仮に岡田元会長の代表復帰が登記されたとしても、知裕氏側は取り消しを求めるつもりだという。そうなれば、岡田元会長のユニバーサルへの復帰は、さらに遠のく。