刑事事件、民事事件として訴追される可能性
岡田元会長は会見で、OHLの代表に戻った後、ユニバーサルの経営にも復帰するとしているが、復帰どころか刑事事件で逮捕・起訴、民事事件での損害賠償といったリスクが高まっている。
ユニバーサルは8月30日、岡田元会長が関与した3つの疑惑について報告書を発表。このうち、「外国法人に無担保・無利息で約20億円の貸付を行った」件については、「OHLおよび岡田氏個人の第三者に対する貸付債権を回収するため、また、美術品代金の支払いという個人的な用途に充てる資金を得るため、(中略)取締役会に図ることもなく、独断で本件貸付を行った」と結論づけている。これは、特別背任に当たる可能性がある重大な問題だ。
岡田元会長は会見で、「20億円は、11月にも返済されるから問題はない」などと説明している。しかし、貸し付けた会社(本社はバージン諸島)の登記簿を調べてみると、すでに登記が抹消されている。20億円を回収するのは難しいとみられている。
香港の警察に被害届を提出
今後、焦点となるのは、岡田元会長がどこまで追い詰められるのかということだろう。
ユニバーサルの調査報告書では、「岡田氏は(ユニバーサルの子会社の)TRAの経理担当者に指示して2億円相当の小切手を作成させ、これに署名して振り出した。(中略)岡田氏個人の利益を図る目的でTRAの預金を使い込んで経済的損失を与えた」との問題も「クロ」認定されている。ユニバーサルはこの案件について、すでに香港の警察に被害届を出している。
これにとどまらず、「各国の警察組織などからの捜査要請が来ており、順次、応じている」(ユニバーサル関係者)という。今後、どこまで警察当局が動くのか、情勢を見守りたい。
また、こんな証言もある。
岡田元会長と取引のある関係者によると、岡田元会長の一部の銀行口座が凍結されている可能性が高いという。岡田元会長は香港在住であり、外資系銀行を利用しているが、外資系銀行はコンプライアンス遵守が徹底しているため、犯罪に加担している可能性が浮上しただけで口座を凍結することが多い。岡田元会長は、ユニバーサル子会社から2億円を小切手で勝手に降り出すなど、資金繰りに苦慮していた痕跡があり、足元では現預金が逼迫している可能性もある。
また、民事での損害賠償が相次ぐ可能性もある。ユニバーサルの報告書では、20億円の融資、2億円の小切手振り出し以外にも、岡田元会長の保有する会社が融資を受ける際に、ユニバーサルの子会社から約90億円の担保提供をさせられた件についても不正があったとしている。
さらに、「そのほかにも、会社の私物化による損害が多数あったとみられる」(ユニバーサル関係者)としており、損害賠償額が大きく膨らむ可能性がある。