自動車業界猛反発
欧州連合(EU)は、2030年の自動車の二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減する規制案をまとめた。今後EUの各委員会、理事会、議会の了承を得て正式に決定する。規制の内容は、30年までに電気自動車(EV)の販売台数の大幅な拡大なくしてはクリアできず、EU域内の自動車業界は一斉に反発している。
しかし、それも表面上の話で、実際は各メーカーともにEVの生産・販売台数の拡大は織り込み済みのようだ。実質的にはリーフ(日産自動車)1モデルしかEVを持たない国内自動車メーカー、そしてそれを容認するかのような日本の行政とは、明らかに地球温暖化防止に関する取り組み姿勢に違いがある。
37.5%の削減
EUの提案は30年には、21年に対して37.5%もの削減である。21年のそれは走行距離1キロメートルあたりのCO2排出量を95グラム以内にするというものだ(95gCO2/km)。日本流の「燃費」に換算するとリッター24.4キロメートルである。この規制値は実燃費に近いWLTC基準によるものだから、日本のJC08モードではおよそ29km/ℓあたりだろう。しかし、これでも多くのメーカーはクリアが困難である。
しかも規制値は、販売した自動車の総販売台数を掛けた平均値である。車重に応じて規制値を増減させるとはいえ、CO2排出量の多い、すなわち燃費の悪いモデルを販売したいのであれば、燃費の良い小型車を大量に売らなければならない。
リッター47キロメートルか
2030年のCO2排出量は、21年の規制値に対して37.5%減である。つまり59.4gCO2/kmだ。燃費で表すとリッター39キロメートルとなる。JC08ではリッター47kmか。ちなみにプリウスの燃費は、もっとも良い「Eグレード」でリッター39キロメートル(JC08)である。
95gCO2/kmとて無理といわれるなかで、これはとてもエンジン車だけではクリアできないというのが、EU域内メーカーの本音である。しかも、EU議会はEU連合の37.5%に対してさらに厳しい40%の削減を提案していたのであった。
これは実質的には米国のZEV法、中国のNEV法と同様のEV強制導入法といってよい。EVは走行中のCO2排出量がゼロである。1台でも販売すると一気にCO2の平均排出量が減るからだ。