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舘内端「クルマの危機と未来」

自動車産業、CO2ゼロ達成のため大幅人員削減を容認の方向…新車の4割がEVか

文=舘内端/自動車評論家
自動車産業、CO2ゼロ達成のため大幅人員削減を容認の方向…新車の4割がEVかの画像1「Gettyimages」より

自動車業界猛反発

 欧州連合(EU)は、2030年の自動車の二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に削減する規制案をまとめた。今後EUの各委員会、理事会、議会の了承を得て正式に決定する。規制の内容は、30年までに電気自動車(EV)の販売台数の大幅な拡大なくしてはクリアできず、EU域内の自動車業界は一斉に反発している。

 しかし、それも表面上の話で、実際は各メーカーともにEVの生産・販売台数の拡大は織り込み済みのようだ。実質的にはリーフ(日産自動車)1モデルしかEVを持たない国内自動車メーカー、そしてそれを容認するかのような日本の行政とは、明らかに地球温暖化防止に関する取り組み姿勢に違いがある。

37.5%の削減

 EUの提案は30年には、21年に対して37.5%もの削減である。21年のそれは走行距離1キロメートルあたりのCO2排出量を95グラム以内にするというものだ(95gCO2/km)。日本流の「燃費」に換算するとリッター24.4キロメートルである。この規制値は実燃費に近いWLTC基準によるものだから、日本のJC08モードではおよそ29km/ℓあたりだろう。しかし、これでも多くのメーカーはクリアが困難である。

 しかも規制値は、販売した自動車の総販売台数を掛けた平均値である。車重に応じて規制値を増減させるとはいえ、CO2排出量の多い、すなわち燃費の悪いモデルを販売したいのであれば、燃費の良い小型車を大量に売らなければならない。

リッター47キロメートルか

 2030年のCO2排出量は、21年の規制値に対して37.5%減である。つまり59.4gCO2/kmだ。燃費で表すとリッター39キロメートルとなる。JC08ではリッター47kmか。ちなみにプリウスの燃費は、もっとも良い「Eグレード」でリッター39キロメートル(JC08)である。

 95gCO2/kmとて無理といわれるなかで、これはとてもエンジン車だけではクリアできないというのが、EU域内メーカーの本音である。しかも、EU議会はEU連合の37.5%に対してさらに厳しい40%の削減を提案していたのであった。

 これは実質的には米国のZEV法、中国のNEV法と同様のEV強制導入法といってよい。EVは走行中のCO2排出量がゼロである。1台でも販売すると一気にCO2の平均排出量が減るからだ。

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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