震源はパリ協定
このような厳しい自動車のCO2排出量規制の背景には、年々強まる地球温暖化に対する危惧がある。地球温暖化の主たる原因は、化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の燃焼による大気中のCO2濃度の増大である。石油(ガソリン、軽油)を燃料にする内燃機関自動車は、IEA(国際エネルギー機関)等の資料から計算すると、世界のCO2排出量の22%にも及ぶ大量のCO2を排出する(日本の自動車は16%)。地球温暖化の元凶である。
ちなみに国別排出量の第1位は中国(28.2%)だ。自動車のCO2をゼロにするとは、中国のCO2排出量をゼロにすることに近いのである。EUが30年の自動車のCO2排出量の新規制を提案したのは、18年12月17日であった。その2日前には地球温暖化・気候変動防止を討議するCOP24が閉幕し、先進国・途上国の別なく15年のパリ協定の本格的運用が決定された。37.5%削減の提案は、当然ながら地球温暖化・気候変動防止のパリ協定を受けたものである。
新車の4割をEVへ
EUの削減提案を受けてドイツ自動車工業会は「自動車産業の雇用を危険にさらす」と批判、「規制値をクリアするには新車の3分の1をEVにする必要がある」と述べた。一方、フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長は「新車の4割以上をEVにしなければならず、その場合は10年で4分の1の人員削減と投資の見直しが必要だ」とコメントした。
EUは、「30年には90年比40%のCO2排出量削減が必要だ」というパリ協定を重視している。さらに50年にはCO2排出量実質ゼロを目指すべきだとEU委員会は提案している。それほどにCO2削減は喫緊の課題であり、そのためには自動車のCO2排出量もゼロを目指すしかなく、自動車産業の人員削減もやむを得ないというのが、彼の地、ヨーロッパの認識なのであろう。さて、日本はどうだろうか。
(文=舘内端/自動車評論家)