ドコモ、iPhone苦戦は当然?3大キャリア参入が国内メーカーにもたらす副作用
現在のソーシャル × モバイル化へと続くWeb2.0時代の到来をいち早く提言、IT業界のみならず、多くのビジネスパーソンの支持を集めているシリアルアントレプレナー・小川浩氏。『ソーシャルメディアマーケティング』『ネットベンチャーで生きていく君へ』などの著書もある“ヴィジョナリー”小川氏が、IT、ベンチャー、そしてビジネスの“Real”をお届けする。
日本の3大キャリアがiPhoneを採用し、三つ巴の戦いに突入したわけだが、緒戦はどうやらソフトバンクが制したらしい。
しかし、数カ月後、1年後の勝敗は未知数だ。世界的にみると、iPhone 5cおよび5sの発売直後の売り上げは3日間で実に900万台、そのうち高級機の5sが多数派であるという。この割合は恐らく日本国内においても同じだろう。僕は今回初めて量販店で5sを購入したのだが、実際並んでいる客の過半数は5sを購入していた。サンプリングとしては不十分だが、これはマーケティングレポートではない。
5cは、スペック的にはiPhone 5とほぼ同じだ。つまり5cとはiPhone 5の焼き直しにすぎず、従来のiPhoneユーザーとしては買い替えをするメリットがあまりない。初めて携帯電話を持つ人か、Androidユーザーもしくはフィーチャーフォン(ガラケー)ユーザーの購入対象といえる。もともとのiPhoneユーザーであれば、大多数は5sを選ぶ。つまり、iPhone 4、4s、5のユーザーが買い替える場合は、5sを購入することになるわけだ。
加えて、iPhoneを日本国内にもたらし、日本人の求めるさまざまなニーズ(例えば絵文字など)を実現させたのはソフトバンクだ。その恩恵に報いるという忠誠心を多くの初期iPhoneユーザーは持っているので、ソフトバンクから他社に乗り換える人は少数派だ。もし初速で5cの売り上げが5sを圧倒していたとしたら話は別だが、この結果を見ると、ソフトバンクの勝利は、なるべくしてなったといえるだろう。つまり、ドコモのファンにとってかなり残念に見える今回の結果も、中長期的にみるとそれほど落胆するべきことではない。
●3大キャリアがiPhoneを扱うことの副作用
3大キャリアすべてがiPhoneを扱うことで、もたらされるものが3つある。まず1つ目は、日本国内におけるAndroid搭載スマートフォンのシェアの大幅な低下だ。これは誰の目にも明らかだろう。
2つ目は、ソニー以外の国内メーカーのスマートフォン市場からの撤退だ。日本の家電メーカーは、スマートフォンではなくウェアラブルコンピューティングデバイス(腕時計型のスマートフォンなど)の開発に一刻も早く取り組むべきだろう。
3つ目は、フィーチャーフォンの命運が尽きたことだ。2~3年前の予想では、2015年にフィーチャーフォンのアクティブユーザーをスマートフォンが抜くだろうといわれていたが、今年中に抜いてしまうかもしれない。
フィーチャーフォンは、「電話のしやすさ」という点だけはスマートフォンに勝るし、いまだにふたつ折りに郷愁を感じるユーザーは少なくない。しかし、その小さな市場で生きていけるような小さなメーカーは日本にはいない。日立製作所もシャープもパナソニックも、もちろんソニーも、需要があるからといってフィーチャーフォンをつくり続けることはあり得ない。10年代に入って以来、インターネットとはモバイルのことだ。インターネットが生活にもたらす革新はこれからも続くが、それは全てモバイルによるものだ。そして、今のままでは、日本の企業はその舞台から消え去る。
(文=小川浩/シリアルアントレプレナー)