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アマゾン配達員、在宅中なのに不在票入れて荷物を持ち帰り…「謎行動」続出

文=清談社、協力=坂田良平/物流ジャーナリスト
アマゾン
「Getty Images」より

 ネット通販最大手のAmazon(アマゾン)は、常にサービスの拡充に努めており、ユーザーの満足度も高まっている印象がある。しかし、通販という業務における根幹である「配送」に関するクレームは、SNSなどにも多く報告され、なかなか減る様子が見られない。

 そんなクレームのなかには、お客が在宅中であるにもかかわらず、配達員が不在票だけ入れて荷物を持ち帰ってしまうといった、不可解なケースが見られるという。アマゾンの配送はなぜ評判が悪いのか、そして改善のために何が必要なのかについて、専門家に聴いた。

 ネット通販業界で、王者であり続けるアマゾン。「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」という企業理念を掲げ、様々なサービスの開発、改善を続けているが、多くのユーザーから不満の声があがっているのが、アマゾン配達員に関することだ。

 なかでも話題になっているのが、「配達に来たのにインターホンを鳴らさず、不在票を残して荷物を持ち帰られた」というケースだ。

 ユーザーからしてみれば、「ずっと家で待っていたのに、どうすれば荷物を受け取れたのか?」と、狐につままれたような感覚になってしまう。

 このクレーム報告に対して、他のユーザーからは「嫌がらせ?」「意味不明すぎる」「結局再配達するので、余計に手間がかかるのでは?」などと、疑問の意見が飛び交った。

 このユーザーが住む物件はオートロックの共同玄関で、宅配ボックスが設置されておらず、置き配も不可という条件のようだが、それでもインターホンも鳴らさずに荷物を持ち帰るというのは不可解だ。なぜこのような配達ミスが起こるのか。物流ジャーナリストの坂田良平氏に聞いた。

「このような事例はレアケースだと思いますが、私も同じような経験をしたことがあります。私の場合はインターホンの接触が悪く、ボタンを強く押し込まないと鳴らない状態になっていたので、反応がなかったことで不在と判断し、荷物を持ち帰ったのではないかと思います」(坂田氏)

 似たようなケースでは、アマゾンサイトでの注文履歴では「配達中」となっていたので家で待っていたら、いつの間にか「ご不在のため持ち帰りました」と表示が変わっており、荷物はもちろん不在票すら置いていなかったという事例が報告されている。

「これは配達員が意図的にやったということも考えられますね。例えば、午前中に時間指定された荷物があり、もう間に合わないという時に、履歴だけ『不在のため再配達』のステータスにしてしまうという行為です。荷物はそのまま配送センターに戻せば、次の日にまた違うドライバーが再配達することになります。他人に押し付けることで自分のミスを隠すという行為で、配達員のモラルが問われます」(同)

 アマゾンの配達サービスが劣化したという書き込みはSNSなどでよく見かけるが、これは配送システムを転換したことによる影響だと思われる。

 アマゾンは2013年に佐川急便との取引を終了。その後はヤマト運輸に頼っていたが、コスト削減のために徐々に取引量を引き下げていった。代わりに委託されたのが「アマゾンデリバリープロバイダ」と呼ばれる、地域密着型で営業している中小の配送業者だ。現在は9社が登録されており、ブロック分けされた各地域で配送を担っている。

 このアマゾンデリバリープロバイダは、自社で雇っている配達員だけでなく、下請けとして個人事業主による軽貨物自動車配送業者を利用している。

 さらにアマゾンは、こうした個人事業主に直接的に配送を託す「Amazon Flex(アマゾンフレックス)」という運送契約も行っている。どちらの流れでも、末端では個人事業主による軽貨物自動車配送業者へ行き着くので、負担が大きくなっているのだ。

「このような個人配送業者の問題は、横の繋がりが希薄で、情報の共有ができないこと。会社なら配達員同士で『あの家のインターホンは故障している』などの申し送りができますが、個人間では難しい。そこで配送ミスを繰り返したり、勝手が分からずに持ち帰るようなケースが発生しているのではないでしょうか」(同)

 アマゾンフレックスに限らず、こうした個人配送業者は増加傾向にあるという。

「軽貨物自動車配送事業者は、この10年で3割以上増えていますが、その大半が個人事業主と思われます。業界では『物流の2024年問題』が取り沙汰されていますが、それを解消する手段としても大いに期待されています。

 しかし、その労働実態は非常に厳しい。軽貨物自動車運送事業適正化協議会が行ったアンケートによると、1日の平均労働時間が8時間以下という業者は4割ほど。そして1日に配達する荷物は、通常期は100個未満が53%ですが、繁忙期では200個以上が26%にも達しています。私が実際に話を聞いた個人事業主の配達員さんは、1日13時間働いて300個以上も配達しているそうです。これはもう労働としての限度を超えています」(同)

 労働環境が悪ければ、配送の品質も落ちてしまうのは自明の理といえる。しかし、現段階では個人配送業者のモラル向上と労働環境の改善は難しいと指摘する。

「消費者からすれば、個人配送業者にも大手並みのサービスを求めてしまうのは当然でしょう。例えば、業界の任意団体などがマニュアルを作ったり、研修・教育プログラムを行うという施策が考えられますが、それを守ることで何を得られるのかという、モチベーションとインセンティブ設計までしなくてはならない。そもそも個人事業主を指導するということは難題なんです。なぜなら、自由にやりたいから個人で働いているわけだから。それをまとめて底上げしていくというのは、そう簡単にはいかないと思います」(同)

 配送ミスや無言持ち帰りといったアマゾン配達員の「謎行動」には、現場の疲弊とモラルの崩壊、そして配送業界が抱える構造的な問題が見え隠れしているようだ。

坂田良平/物流ジャーナリスト、Pavism代表:取材協力

坂田良平/物流ジャーナリスト、Pavism代表:取材協力

「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。物流ジャーナリストとしては、連載『日本の物流現場から』(ビジネス+IT)他、物流メディア、企業オウンドメディアなど多方面で執筆を続けている。
Pavism

Twitter:@Pavism_jp

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