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札幌ドーム、赤字6億円、解体も困難…税金10億円投入、巨大な負債施設に

文=Business Journal編集部
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札幌ドーム(「Wikipedia」より/モンモン)

 札幌ドームにとってはプロ野球球団・北海道日本ハムファイターズの本拠地ではなくなり初の年度となった2023年度、純利益が約6億5000万円の赤字になることがわかった。赤字額は当初の見込みから約3億6000万円膨らんだ。売上減の打開策として総額10億円を投入して設置した、1~2万人規模のイベントを開催する「新モード」の利用もわずか3件どまり。その10億円は札幌市が拠出しており、さらに市は23年度予算で札幌ドームへの助成金として1億4000万円を計上するなど、すでに多額の税金が投入されていることから、地元では札幌ドームの解体を求める声も出ている。今年度(24年度)の業績見通しや黒字化の施策について札幌ドームに聞いたところ、

「今期の業績予想については詳細の公表をしておりませんが、引き続き、黒字化実現を目指してまいります。ネーミングライツや新規広告枠の販売を含めた広告事業、前期以上のイベント日数の確保、経費削減によって黒字化を目指します」

との回答が寄せられた。

 2001年に開業した札幌ドームと日ハムは、二人三脚で歩んでいたかにみえた。札幌ドームは経営安定化のためにプロ野球球団の日ハムを誘致し、04年から日ハムの本拠地となっていた。だが、札幌ドームは16年に日ハムから徴収する一試合当たりの使用料を値上げ。日ハムが札幌ドームに支払っていた使用料は1日あたり約800万円前後とみられ、球場内の広告料や売店など付帯施設からの収入もほとんどが札幌ドームの取り分となっていた。

 日ハムは札幌ドームに対し、使用料の減額や指定管理者制度(公共施設の運営を民間企業等に委託する制度)の導入などを提案してきたが、受け入れられず、16年頃から本拠地移転の検討を本格化。新球場の建設候補地として札幌市は旧道立産業共進会場(現ブランチ札幌月寒)、北海道大学構内、真駒内公園などを提案したが、日ハムは北広島市が提案する「きたひろしま総合運動公園」予定地の活用案を採用。日ハムは新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)」を北広島市に開業させ、23年シーズンから本拠地を移した。

 結果的に日ハムにとってこの本拠地移転は大成功となる。新本拠地のエスコンフィールドを運営するファイターズスポーツ&エンターテイメントは、開業1年目となった昨年の同球場の売上が251億円だったと発表。札幌ドームを本拠地としていた19年と比べ93億円の増収となった(北海道放送の報道より)。

命名権の公募も応募ゼロ

 一方、札幌ドームは苦境に陥っている。年間20億円以上とみられる売上を失った札幌ドームは、イベント数の増加を狙い総額10億円をかけて前述の「新モード」を設置したが、これまでに利用は3件のみ。また、命名権の公募も実施。1年で2億5000万円以上、希望期間2~4年を条件として、主な希望事項として以下を設定していた。

(1)愛称に「ドーム」を含めること
(2)愛称は、公の施設にふさわしいものとし、施設の設置目的がイメージできること
(3)親しみやすさや呼びやすさなど、市民および施設利用者の理解が得られる愛称とすること

 だが、応募締め切り日までに応募はなく、募集は無期限に延長された。たとえば千葉ロッテマリーンズの本拠地「ZOZOマリンスタジアム」のネーミングライツ料は年間3億1000万円、広島東洋カープの「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム 広島」は年間2億2000万円、東北楽天ゴールデンイーグルスの「楽天モバイルパーク宮城」は年間2億100万円。本拠地とするプロ野球球団を持たない札幌ドームの希望価格は高いと評価されたことになる。

 ちなみに、23年度のコンサートの開催は7日のみだったが、地元メディア関係者はいう。

「赤字額は当初予想の2億9400万円の倍以上になり、その主な原因の一つとして広告収入が見込み額の約3億円を大幅に下回ることだとしているが、その広告収入には命名権の販売も含まれており、いかに見通しが甘かったのかを物語っている。札幌ドームは24年度には黒字転換するとしていたが、それを信じる人は少ない。今の状況が続けば、約20億円の内部留保も数年で尽きることになり、札幌市からの助成金というかたちで税金を投入することは世論の理解を得られないため、解体して別の公共施設にするのか、土地や施設を民間企業に売却するということになる。

 あと数年で施工から30年を迎え老朽化も問題となってくるので、もし施設ごと民間に売却するなら早急に決断する必要があるが、球場としてつくられたという特殊性もあり、買い手がつくのかは疑問。更地にして土地を売却するのが現実的だが、巨大なスタジアムを解体するには多額の費用がかかり、そう簡単に解体もできない。市にとって、札幌ドームは巨大かつ無駄な負債施設となってしまった」

 地元の大手企業社員はいう。

「札幌市が55%の株式を持つ第三セクターであり、市職員の天下り先なので、経営がうまくいかなかったところで職員は大して困らず、内部で経営再建のモチベーションが高いとは考えにくい。第三セクターなので赤字になれば市の税金で補てんするという話になるが、世論からの反発が予想され、ずるずると税金で延命させる経済合理性もない。市と札幌ドームはいったいどうするのか、なす術がないのでは」

 今年度、札幌市から補助金を受ける予定はあるのか。札幌ドームはいう。

「今年度は昨年同様、アマチュアスポーツ大会開催支援に係る補助、コンサドーレ開催支援に係る補助を見込んでおります」

(文=Business Journal編集部)

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