今年世間を賑わせた「生活保護費不正受給騒動」の発端は、お笑いコンビ次長課長の河本準一であった。5月25日、都内新宿で行われた記者会見では、株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役・竹中功氏、河本準一、吉本興業株式会社 法務本部長・渡邊宙志氏の3名が登壇し、釈明を行った模様は、繰り返しテレビで報じられた。
しかし、河本氏が記者会見で述べている通り、生活保護の受給資格の有無を判断していたのは、福祉事務所であったということを忘れてはならないのだ。
6月2日発売号の「週刊現代」(講談社)によれば、河本氏の年収は約5000万円と明記されている。もしこれが事実なら、どうして福祉事務所は河本氏の所属事務所に問い合わせ、扶養義務をもっと早い時期に課すことができなかったのであろうか。もちろん、個人情報保護法などの兼ね合いから、そこまで調べることは今の法律では難しいため、自己申告を信じるしかないと言われればそれまでのことであるが……。
●役所のさじ加減ひとつ
この生活保護受給資格に関しては、判断する役所担当者のさじ加減であったり、有力者の言葉添えがあれば比較的簡単に審査をパスできるともいわれている。実際に、あるシングルマザーは、某タレント事務所で役員も務め、国会議員と親しいタレントから「生活保護受けるほうがええんちゃうか? 聞いたげましょか?」とサラリと言われ、耳を疑ったという。誰に聞くというのだろうか? さらに、そのタレントからは「こんなとこより、都営住宅に移ったらどない? 家賃も安なるし、新築マンションみたいにキレイなとこもあるで」とも言われたそうだが、彼はあくまで親切心から言ったようだったという。
当時その女性の生活状態は、親一人子一人の借家住まい。フリーライターとしての稼ぎは月平均10万円程度。しかし、前年度の収入が月平均15万円以上だったために、扶養手当は半額に減額された状況だったという。その上、祖母、父と立て続けの身内の死などのストレスで、一時は寝たきりになっていたが、都営住宅は毎回応募はするものの、すべて落選。一方、「親と議員が親しい」と言っていたシングルマザー友達は、離婚後すぐに立地条件が良い都営住宅に入居したという。怒りにまかせ、「都営住宅は○○党の議員と知り合いでないと入居できないのでしょうか?」と応募用紙に一言書くと、結果は補欠当選。「公開抽選のはずなのに、驚いた」と言っていた。
話を河本氏の件に戻そう。そもそも、生活保護とは人間として最低限度の生活ができない国民を、国が救済するシステムだ。
●資格審査の傾向と対策
が、実際の受給者たちの姿を浮き彫りにすると、本当に必要なのか? と聞きたくなる人も少なくない。
例えば、埼玉県で生活保護の一部を受給することになった60代の元カメラマンは、受給理由は脳梗塞から身体が思うように動かず、働けなくなったことだ。もちろん、そのカメラマンには姉、兄、別れた妻、長男といった血族がいるが、誰ひとりこのカメラマンの面倒を見る気はないのだという。その理由が、
「医者から禁酒、禁煙を言われたが守れない」
「家賃が安いので、離婚前には家族で住んでいた3LDKの公団に、一人身になった今も住み続けたい」
「仕事に関しては、依頼があっても自分の意にそぐわないものは断っている」
というもの。親族でさえも「好き勝手にしい」と思われている人を、国が生活保護で簡単に救済してしまうことが、果たして適切だといえるだろうか……。