オンライン診療の是非
6月に厚労省が打ち出した指針改定案は、医療機関、患者ともに条件があり、まだオンライン診療によるノルレボの処方は限定されている。
【オンライン診療の対象となる患者】
(1)女性健康支援センターや婦人相談所、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターなどに連絡を入れて判断を仰ぐ
(2)近くに受診可能な医療機関がない場合(地理的な要件のほか、性犯罪による対人恐怖がある場合)
(3)内服3週間後には産婦人科を受診すること
受診しない事例も想定されるが、そういったケースを含め、医療機関には数年間の全例のフォローアップをすることを求めた。
【医療機関の義務要件】
(1)処方する医師を産婦人科医師と研修受講医師に限定
(2)研修受講者を厚労省ホームページで公表
(3)薬剤師の前での1錠のみの内服等、ルール整備
(4)インターネットパトロール等を通じた不適切広告への指導
(5)薬剤師に対する産婦人科研修強化
(6)臨床研修医の研修項目に追加
いろいろな条件が付けられたが、オンラインでは正確な診察がしづらいという懸念は拭えないだろう。オンライン診療の場合、処方箋の郵送などにより薬を入手するまでに時間がかかることも想定され、性交渉後72時間の服用に間に合うのかも危惧される。また、性感染症の問題なども考えると、できるだけ医療機関を直接受診することが望ましいということは変わらない。
緊急避妊薬は性暴力被害者などの救済には必要なものであるが、一方では若者が安易に性交渉を行わないように性教育の強化も必要である。学校教育での教育はもちろんだが、性犯罪を減らすために企業内や地域レベルでの性教育や性情報リテラシーを高める活動が重要だろう。厚労省は、パブリックコメントも参考にして指針改定するとしているが、女性に寄り添った内容となることを期待したい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)