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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

川島なお美さん訃報に際し考える がんの早期発見・治療は本当に正しいのか?

文=新見正則/医学博士、医師
川島なお美さん訃報に際し考える がんの早期発見・治療は本当に正しいのか?の画像1「Thinkstock」より

 常識君からの質問です。

「最近、芸能人の方のがんの報道が続きます。がんについて教えてください」

 そうですね。今井雅之さん、川島なお美さん、北斗晶さん、今いくよさん、愛川欽也さん、坂東三津五郎さん、桑田佳祐さん、つんくさんなどなど、多くの方ががんに罹患しています。がんの治療に成功した方もいれば、何人かの方はがんで亡くなり、またがんを持ったまま現在も治療中の方もいます。

 いったい、がんとはなんなのでしょうか。

 それは悪性腫瘍です。ちなみに、漢字の「癌」とひらがなの「がん」は実は微妙に使い分けられています。「癌」は「がん」に含まれるのです。悪性腫瘍を意味するのが「がん」です。世の中の病院や財団法人、NPOなどが「がん」を使用していることも理にかなっています。漢字の「癌」は上皮性の悪性腫瘍で、上皮性というのは皮膚の続きといったイメージです。つまり、僕たちが小さくなって皮膚から到達できる部位の「がん」を「癌」と称しています。

 口の続きは食道、胃、小腸、大腸です。そして膵臓も実は膵液を出しているので消化管とつながっています。肝臓も胆汁を出しているので消化管とつながっています。呼吸器系では咽頭から喉頭、そして肺などもつながっています。乳腺も母乳を出すので皮膚とつながっています。泌尿器系も尿を出すので、外界と実はつながっています。婦人科系の臓器も出産と関連するのですから外界とつながっています。

 一方で骨や脳や血液は外界とはつながっていないので、骨癌、脳癌、血液癌などという言葉はあまり耳にしません。通常骨腫瘍、脳腫瘍、白血病と呼ばれます。

2つの可能性

 さて、悪性とは悪さをするという意味です。その場で悪さをすることもあれば、遠くに遊びに行って悪さをすることもあります。前者を「浸潤」、後者を「転移」といいます。その場で大きくなっても通常は命に別状ないのです。たとえば妊娠中の方はお腹に3キログラムの赤ちゃん、そして胎盤などを抱えていますが、元気ですね。そんな悪さをしないが大きくなるものは、がんではなく良性腫瘍とも呼ばれます。もちろん妊娠は腫瘍ではありません。

 さて、これからが問題で、顕微鏡で組織を見ると、いままでの経験から悪性かどうかがわかります。悪性の性質を発揮して浸潤や転移をしているものもわかりますが、「今はまだ浸潤転移をしていないが、将来的に浸潤転移をする可能性が極めて高い」という判断もできます。サイエンスが進歩して良悪性の判断が結構できるようになったのです。問題は命にかかわるような浸潤転移をいつするかが、まだ正確にはわからない点です。ですから、早期発見して、早期治療をしようという前の対処になります。

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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