インフルエンザ予防接種、迷ったときに読む記事…“こういう人”は絶対に受けるべき理由
ワクチンは有効なのか?
こうして厳格に管理されてつくられたインフルエンザワクチンですが、「果たして効くのかどうか?」「打っておこうか、やめておこうか?」というのが気になるかと思います。ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかることもあるので、「意味がないからやめておこう」と思うのも無理はありません。
効果があるかどうかは、「抗体陽転率」というもので判定します。打つ前と比べて抗体が増えているかを確認します。その量が基準に達したら陽転したと判定し、その人数がどれだけいたかという割合を陽転率として表します。100人にワクチンを打って87人が基準量まで抗体が増えた場合、「抗体陽転率が87%」となります。抗体量を増やすというのがワクチンの作用なので、これが高いほど効果が高いといえます。なお、ワクチンの添付文書に掲載されている抗体陽転率は成人1回接種で87%です。
もうひとつの指標が「有効率」です。この指標が誤解されていることで、「ワクチンを打っても意味がない」と思っている方がいるのです。有効率73%とは、100人にワクチンを打って73人がインフルエンザにかからなかったという意味ではありません。
100人の人を50人ずつワクチン群と非ワクチン群に分けます。ワクチン群からは4人が発症し、非ワクチン群からは10人が発症しました。発症した人の差、10人-4人=6人がワクチンを打ったことで発症せずに助かったと考えられるわけです。この場合の有効率は、
助かった6人 ÷ 非ワクチン群で発症した10人 × 100=60%
となります。
インフルエンザのように大流行をしてしまう病気については、「集団」のなかでどれだけの人を助けられるだろうか? という考えが必要となってきます。有効率が高いと判断すれば、公衆衛生を担当する行政はワクチン接種を推奨することになります。
完全ではないが効果がある
ワクチンを打っても打たなくても、インフルエンザにはかかってしまいます。ワクチンは完全に防御できるものではないし、メリットとデメリットを考えて「やらない」と選択することもあるでしょう。しかし、重症化や合併症の発生を予防する効果は証明されており、高齢者に対してワクチンを接種すると、接種しなかった場合に比べて、死亡の危険を5分の1に減少させ、入院の危険を約3分の1~2分の1にまで減少させることが期待できるのです。インフルエンザが死に直結しやすい高齢者や、喘息、心臓病、腎臓病といった持病のある人は、ワクチンを受けていただきたいと思います。
(文=小谷寿美子/薬剤師)