–その2つは、「絶対に相手と婚外恋愛に発展しない」という強い精神力や自立心が求められそうですね。そのほかには、どのような“ワクチン”があるのでしょうか。
坂爪 3つ目は、1960~70年代の「性革命の時代」にアメリカで生まれた「オープンマリッジ」です。一般的には、夫婦がお互いを社会的、性的に独立した個人として認め合い、所有欲や独占欲、嫉妬心に妨げられず、お互いの合意の上で自由に愛人をつくることができる結婚のスタイルを指します。
こう聞くと「愛人つくり放題」などと思うかもしれませんが、従来の一夫一婦制では、配偶者を所有や支配することで、夫婦関係が閉鎖的になってしまいがちです。オープンマリッジでは、夫婦が互いの能力や魅力を最大限に発揮することで成長し、その成果が他方にも及ぼされるというフィードバックループに特徴があります。しかし、この実験は基本的に失敗に終わり、実際にはごく少数の人にしか実践できません。
江戸時代は婚外セックスが盛んだった?
–オープンマリッジが生まれた時代のアメリカはヒッピーがはやりましたが、ヒッピー文化の中にはスワッピングもありましたね。
坂爪 ヒッピーとスワッピングは、かなりリンクしています。ただ、今の日本で夫婦同士がお互いを交換するような正統なスワッピングは少なく、夫婦間のマンネリの打破や、複数の相手とのセックスを楽しむための娯楽として行われているのが実際だと思います。スワッピングの本来の目的は、ほかの相手との性行為により、身体感覚がリセットあるいは更新され、パートナー間の愛をさらに深めることです。
–ヨーロッパの小説を読んでいると、時々そういったシーンが登場します。
坂爪 スワッピングにしても、オープンマリッジにしても、基本的には欧米の文化で、アジアにはそういった文化は見当たりません。
–そうすると、日本では、婚外セックスはどのようにされていたのでしょうか。
坂爪 例えば、江戸時代では武士階級のルールが厳格化されていた半面、一般の人たちは盆踊りで乱交を行ったり、雑魚寝や歌垣(男女が集まり、歌の掛け合いを行う行事)で年に一度、婚外セックスをする機会があったようです。