LINE上で検索も買い物もすべてのコトが済む時代へ…月額5百円スマホ投入で通話無料
ネットはLINEの中だけで完結する時代が来る?
フェイスブックやマイクロソフトなどがAI化を進めているといっても、まだ試行錯誤の段階だ。たとえば、マイクロソフトが3月にTwitterで公開したAIボット「Tay」は、差別的発言を連発するようになり、わずか一日で「話し疲れたので眠ります」とツイートして休止となった。
Tayは一般ユーザーとの会話を繰り返すことで学習し、成長していく仕組みになっていた。しかし、悪意あるユーザーたちが協力しあって差別的で不快なメッセージを繰り返し送り、こういった反社会的意見を学習させた結果Tay自らが人種差別、性差別、暴力的な発言するようになったのではないかと推察されている。マイクロソフトは、Tayの弱点を狙う悪意ある攻撃を想定していなかったと認めている。
日本で一番人気のメッセンジャー・アプリであるLINEは、3月にモバイル通信サービスに参入することを発表した。月額500円からの格安スマホを販売し、LINEによるトークや電話は無料で使い放題にすると発表した。
日本のスマホ普及率は50%に満たないが、それは月額料金の高さやデータ通信料の上限などに原因がある。そういった顧客の不満を解消し、スマホの普及につながるような新サービスを始めたとLINEは説明している。しかし、本音は「安いスマホを購入して、LINEサービスだけを使ってください。それですべてが完了します」とユーザーに訴えているのだ。「LINEモバイルを使ってくれれば、あらゆるサービスを利用でき、ショッピング、予約、検索、すべてが完了します」とアピールしているのだ。
いずれ、「ネット体験はLINEを通してだけ」というユーザーが増えてもおかしくない。
メッセンジャー・アプリがモバイル端末のプラットフォームになる日がくるかどうかは、会話型ボットが従来のアプリより優れたユーザー体験を提供して、一般ユーザーに受け入れられるかどうかにかかっている。そして、会話型ボットとメッセンジャー・アプリの合体は、簡単・便利を重要視する今のユーザーに気に入られるのではないだろうか。
マイクロソフトのように、グーグルが「かつての王者」になることは、大いにあり得る。01年、EUの政策執行機関である欧州委員会はマイクロソフトに、「OSの支配的立場を違法に乱用している」と指摘する異議告知書を送った。そして16年4月、「ネット検索で圧倒的に優位な立場を利用した独占禁止法違反の疑いがある」と同じような異議告知書をグーグルに送っている。
独占禁止法をめぐる法的争いには年月がかかる。マイクロソフトの場合は10年かかっている。最終判断が出る前に、モバイル端末のプラットフォームがアプリに代わっているかもしれない。そして、グーグルの支配的地位は新興勢力に取って代わられているかもしれないのだ。
テクノロジーの世界の変化のスピードには、政治も法律もついていけない。
(文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学客員教授)