小売店のBGMの効果
小売店のBGMの研究ではテンポの影響を分析したものが多くあります。まず、ミリマンは、スーパーで楽器演奏のBGMのテンポを変える実験を行い、テンポの速いBGMは買い物客の歩くペースを速めること、および売上はテンポの遅いBGMのほうが速いBGMよりも高くなったことを明らかにしています【註3】。買い物客は意識していなくてもBGMに合わせて歩くので、遅いテンポのBGMを流すことで買い物客の滞店時間を延長できるのです。そのため、いろいろな商品に注意が向けられるようになり、購買量を増やせたのです。
へリントンとカペラは、スーパーで楽器演奏の音楽のテンポ(遅速)と音量(大小)を組み合わせたBGMを流す実験を行いました【註4】。その結果、買い物客によるBGMの評価が高くなるほど滞店時間は長く、購入金額も高くなりました。この結果からはテンポや音量の影響は見られなかったので、BGMが買い物客の好みと合っているかどうかのほうが重要ということになります。
ノフォーレらはテンポとモードを組み合わせた分析をしています【註5】。モードは気分のインディケーターで、同じ曲であってもメジャー・モードではポジティブな気分に、マイナー・モードではネガティブな気分になるそうです。POPとロックを用い、テンポ(遅速)とモード(マイナー、メジャー)を組み合わせたBGMをデパートで流す実験を行いました。その結果、売上は遅いテンポでマイナー・モードのときに最も高くなり、他のBGM間での違いはありませんでした。マイナー・モードのBGMを使うときには、テンポを考慮したほうがいいといえます。
ワイン選択へのBGMの効果
ワインの選択は、BGMのジャンルの影響を強く受けるようです。アレニとキムは、ガラスで区切られたワインセラーを店内に置いているレストランを選び、ワインセラーでトップ40、あるいはクラッシックを流したときの顧客の反応を測定しました【註6】。トップ40は、専門誌のアルバム部門で上位40位か、シングル部門で上位20位にランクされた曲です。顧客は自由にワインセラーに行って購入できるようになっています。結果は、購入本数に違いはありませんでしたが、全体の売上はクラッシックのほうが高くなりました。つまり、クラッシックは顧客をより高価なワインの購入へと導けるといえます。