フランス音楽とドイツ音楽を比較した研究もあります【註7】。ノースらはイギリスのスーパーで、価格と甘さが同程度のフランスとドイツのワインを4種類ずつ陳列し、それぞれの音楽を流したときのワインの販売本数を測定しました。陳列棚の側には国旗を差し込み、原産国がすぐにわかるようにしました。結果は、フランス音楽を流したときにはフランスワインが、ドイツ音楽を流したときにはドイツワインが多く売れました。買い物客は、BGMを聴いてその国について考えたと回答しているので、特定の売り場に限定されたBGMは、店内全体で流されるBGMよりも気づきやすく、関連商品への購買意欲を上昇させる効果が高いといえます。
飲食店のBGMの効果
BGMの研究は、飲食店に対しても行われています。ミリマンはテンポに焦点を当て、高級レストランで週末の夜に楽器演奏のBGMを流す実験を行いました【註2】。その結果、テンポの遅いBGMは速いBGMよりも、顧客が途中で帰らずに席に案内されるまで待っている時間と着席後の滞在時間を延長できること、およびアルコール飲料の消費量とマージン(売上から食事と飲料のコストを引いた額)を多くすることが明らかにされました。食べ物の消費量には違いはありませんでした。
ジャンルに着目したのはノースとハーグリーブスです【註8】。大学のカフェテリアで昼に、ポップス、クラッシック、イージーリスニングのいずれかをBGMで流し、学生にカフェテリアの評価と人気の食べ物への支払意志額(どのくらい支払いたいか)を回答してもらいました。その結果、カフェテリアの評価は、ポップスでは「快活と積極的」、クラッシックでは「高級と高貴・エレガント」、イージーリスニングではやや「高貴・エレガント」となり、BGMを流さなかった場合には「平穏」となりました。支払意志額と売上は、ポップスとクラッシックを流したときにもっとも高くなりました。
ウィルソンもまた、ジャンルを分析しています【註9】。人気レストランで、夜にジャズ、クラッシック、イージーリスニング、ポップスのいずれかをBGMで流し、顧客にレストランの評価と自分の食事への支払意志額を回答してもらいました。その結果、レストランの評価は、ジャズでは「活気と刺激的」、クラッシックでは「高級と洗練」、イージーリスニングでは「安っぽい」、ポップスでは「快活」、BGMがない場合にはやや「安っぽい」になりました。支払意志額は、クラッシック、ジャズ、およびポップスを流したときに高くなりました。
これらの結果から、クラッシックとポップスはレストランのタイプ、客層、時間帯に関係なく、効果が高いといえます。