BGMの選択
以上見てきた研究からBGMが店のイメージや売上に影響を与えることがわかりました。しかし、BGMの種類は構造やジャンルを含めるとかなり多くなるので、どのタイプのBGMがどのような店に適しているのかといったパターンを見出すのは容易ではありません。
そこで、BGMのタイプを固定せずに、店の状況に合わせて変えるのも一案かもしれません。小売店の場合、店内が混み合っているときにはテンポの速いBGMを流して買い物客の歩くスピードを速めると、買い物客一人ひとりの購入金額はあまり増えないかもしれませんが、混雑が少しは緩和し、買い物客の不快感の減少につながる可能性があります。そして、店が空いているときにはテンポの遅いBGMを流してゆっくりと買物してもらい、いろいろな商品に目を向けてもらうといいでしょう。このときにクラッシックを選ぶと、より高級な商品を購入する気分になってもらえるかもしれません。
また、レストランでは、客の滞在時間の長さが売上に大きく貢献する店、例えばアルコール飲料を扱っている店では、夜間はゆっくりとしたテンポのBGMを流し、アルコールがあまり消費されない日中はテンポの速いBGMで滞在時間を短くすることが考えられます。同様に、客一人ひとりの支出額が限られていて回転率を上げたい店、たとえばカフェやファーストフード店などではテンポの速い曲を選ぶと効果があるかもしれません。ポップス、ジャズ、クラッシックはさまざまな飲食店のジャンルに適しているので、これらの組み合わせもお勧めです。
さらに、店内が広い小売店では、店内をなんらかの特徴でいくつかに分け、それぞれに適したBGMを流すと、BGMの効果が上がるかもしれません。
BGMでほかに注意するべき点は、BGMが店の雰囲気に適合しているかどうかといった「フィット感」です。フィット感の評価が高いと、小売店の商品構成に対する評価(品揃えや品質など)が高くなるという研究結果もあります【註10】。
BGMのフィット感は、顧客の年齢、所得、教育水準、ファミリー・ライフサイクルによって異なるとして、高級品の売り場ではクラッシック、10代向けの売り場ではロック、大人向けの売り場ではソフトロックを提案している研究もあります【註11】。しかし、画一的なBGMではなく、斬新さや新しさがあり、かつフィット感も高いBGMを選ぶことができれば、店の魅力度をさらに高められると思われます。