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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

酷暑&熱中症、間違いだらけの回避法!エアコン&室内はかえって危険?なしでも快適?

文=新見正則/医学博士、医師

暑さに強くなる方法

 次に、非常識君が口を挟みました。「そもそも、熱中症が危険だと言って、屋外から室内に避難することが大問題だ!」と言います。「戸外でも日陰にいて、そして適切に水分を補給して少々の塩分も追加すれば完璧のはずだ」と続けます。屋外は適度に風も吹くから、むしろ室内よりも安全だという主張です。

 確かに、そうですね。木立の中を気持ちいい風が吹き抜けるようなところがあれば、熱中症対策にも最良と思います。ただ、最近のコンクリートやアスファルトで覆われた、そして照り返しの強い都会の環境では、気持ちの良い風が吹く場所を見つけるのはちょっと無理かもしれません。

 また、非常識君が付け加えます。「暑い場所を避けるから、暑さに弱い体になるのだ。日頃から、少々の暑さは鍛錬と思って、その暑さを味わえば良いのだ!」という主張です。確かに、毎日のように炎天下で激しい運動を繰り広げている高校生などは、滅多に熱中症になりません。一方で、日頃は外での野球観戦などしないような人たちが、たまに野球の応援に行って熱中症になることはしばしば起こります。

 暑さに強くなることを暑熱馴化(しょねつじゅんか)と呼びます。ボツボツと鍛えると人の体は強くなるのです。大切なことはボツボツです。突然に今までに経験がない灼熱の環境下は非常に危険です。熱中症注意報ぐらいであれば、みんなで注意しながらの運動も有益かもしれません。しっかりと水分を補って、そして塩分も少々補って、適度の休憩を取りながら周りの人の状態にも気を配って、暑い環境に耐える訓練も実は大切ですね。

 小中学校が熱中症注意報のたびに屋外での体育を回避していたのでは、将来建築現場で働く人がいなくなります。工場では暑熱下の部署もあります。熱中症警報の時に無理に体育をやれとはいいません。しかし、少々の暑熱環境は、ある意味ちょうどいい勉強の機会と思って、それを利用することも理にかなっています。

新見正則/医師、新見正則医院院長

新見正則/医師、新見正則医院院長

外科専門医 /消化器病専門医 /消化器外科専門医 /消化器内視鏡専門医
慶應義塾大学医学部卒業後、外科医として研鑽を積む。大学病院や関連病院で診療にあたるほか、英・オックスフォード大学にて博士課程を修了。
新見正則医院 公式サイト

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