カルシウム摂取、骨折リスク低減と無関係…サプリは死亡リスク増大、骨粗鬆症への誤解
骨粗鬆症の予防にはカルシウムを摂ればよいのか?
骨粗鬆症の予防には、カルシウムを摂ることが一般的には推奨されています。骨というのは決してカルシウムだけでできているわけではありませんが、主成分がカルシウム塩であることは間違いがなく、そのためカルシウムが欠乏すると骨粗鬆症になり、カルシウムをたくさん摂取することで、骨粗鬆症やそれに伴う骨折が予防できると、広く信じられてきました。
疫学データからの推測では、高齢者においては1日1000ミリグラムから1200ミリグラムのカルシウムを摂ることが、骨の健康と骨折予防のために、世界的に推奨されています。
しかし、実際には欧米でも食事からのカルシウム量の平均は、1日700から900ミリグラム程度で、日本を含むアジアやアフリカでは、もっと低いことが知られています。そのため、カルシウムやその吸収を高めるビタミンDが、サプリメントとして広く使用されています。
ところが、実際にはカルシウムの摂取量と健康との関連性が、精度の高い臨床試験で証明されている、ということはありません。それどころか、2013年に「British Medical Journal」という医学誌に発表された論文によると、1日量で1400ミリグラムを超えるカルシウムのサプリメントの使用により、心血管疾患による死亡リスクの増加や、総死亡のリスクの増加が報告されています。サプリメントのカルシウムが健康に悪いという、ビックリするような結果です。
こうした知見があるので、最近のガイドラインでは、食事からのカルシウムの摂取は1200ミリグラム以上を目標とするけれど、サプリメントの使用自体は推奨しないという流れになっています。
カルシウムは骨折予防には効果がない(高度の不足の場合を除く)
そもそもカルシウムを多く摂ることは、本当に骨折予防に有効なのでしょうか?
カルシウムは骨の材料ではありますが、口から摂取したカルシウムが効率よく骨に取り込まれるという保証は、どこにもありません。高齢者ではむしろ動脈硬化や炎症などの部位にカルシウムが沈着して、病気の原因となることが知られています。
15年の「British Medical Journal」に、ニュージーランドの研究者によって過去に行われた主だったこの分野の臨床研究をまとめて解析し、食事のカルシウムと骨折リスクとの関連、そしてサプリメントとしてのカルシウムと骨折リスクとの関連を、トータルに検証した論文が発表されています。