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石原藤樹「その医療の常識、本当ですか?」

カルシウム摂取、骨折リスク低減と無関係…サプリは死亡リスク増大、骨粗鬆症への誤解

文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長

 食事によるカルシウムの摂取量と骨折リスクとの関連を検証した、50以上の臨床データをチェックしたところ、その大部分では骨折リスクとカルシウム摂取量との間に、有意な関連は認められませんでした。

 カルシウムのサプリメントを使用した、介入試験と呼ばれる精度の高い26の臨床試験をまとめて検証したところ、トータルな骨折リスクはサプリメントにより、有意に11%低下し、脊椎の骨折リスクも14%も有意な低下が認められましたが、股関節や前腕の骨折のリスクには、有意な低下は認められませんでした。ただし、より精度が高く、バイアスの少ないデータに絞って再検討すると、サプリメントによる骨折予防効果も有意には認められなくなってしまいました。

 要するに、これまでの臨床データからわかることは、食事からカルシウムをたくさん摂っても、それほど摂らなくても、それで骨折が予防されたり、リスクが上がったりすることは、どうやらないと考えたほうがよいということです。

 もちろん、カルシウムに高度の欠乏があれば、それは骨のみならず全身の健康に影響を与えることは間違いがなく、そうした場合の補充には効果が期待できますが、カルシウムの摂取量が許容範囲で多めでも少なめでも、あまり差がない可能性が高いのです。

 そして、サプリメントとして比較的大量のカルシウムを摂ったり、ビタミンD【25(OH)D】を併用すると、骨折リスクはやや低下する可能性がありますが、それほど明確な差ではなく、かつ過剰摂取のリスクもあるので、こちらもそれほど推奨されるような行為ではなさそうです。

骨折予防のための生活習慣とは?

 それでは骨の健康を守るには、どうすればよいか、ということになります。適度な運動の習慣と充分な睡眠、カルシウムは適度な摂取を心掛け、あまり神経質にはならず、50歳を超えたら一度は骨密度を測定して、その後のプランを建てることが肝要のように思います。

 カルシウムの不足が疑われる場合には、カルシウム自体の補充より、ビタミンDの補充のほうが有効だと考えられます。低栄養は骨も脆くするので、たんぱく質を充分に摂ることが骨の健康のためには必要です。過度のアルコールは骨の形成を抑えるので骨粗鬆症を進行させます。この場合の適度というのは、概ね1日3合を超えるような飲酒です。喫煙は骨の形成を抑え、女性では早期の閉経に結びつきやすいので、骨にもよくありません。禁煙が骨のためにも推奨されます。

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

北品川藤クリニック院長。医学博士。1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科大学院卒業。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任
北品川藤クリニック

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