「だから、結婚前も後もセックスしませんし、ベッドや部屋も、もちろん別々です。『男は外で働いて稼ぐ』『女は家事をする』という役割意識もありません。共生婚の夫婦の多くは相手の時間に合わせる感覚もないので、食事も普段はバラバラ。半年に1回、一緒に外食に行く程度だそうです」(同)
夫婦でありながら、お互いの時間や生活が完全に独立している奇妙な結婚生活。だが、意外にも破綻するどころか、共生婚の夫婦は結婚後、何年たっても当初の関係性を保ち、双方の家族づきあいもうまくこなすのだという。
「年末年始は互いの実家に顔を出してきちんとあいさつしたり、誕生日には『おめでとう』のLINEを送ったり。距離感が近すぎないからこそ、お互いへの感謝の気持ちも忘れない。周囲には、普通の仲良し夫婦に見えていると思います」(同)
共生婚の夫婦、子どもはどうする?
しかし、結婚相手を探すのが困難な時代とはいえ、恋愛感情がまったくない相手と結婚することに意味やメリットがあるのだろうか。亀山氏は、その点について「最初から結婚や結婚相手に対して理想や夢を抱いていないので、現実とのギャップに落胆することがない」と語る。
また、主に20~40代の未婚の男女にとって、常に悩まされるのが家族や周囲からの「結婚しないの?」というプレッシャーだが、共生婚によって一応は「結婚」というかたちをとることで、親を安心させてあげることもできるという。
「なにより、共生婚は自分の自由な生活が送れるという良さがあります。相手の生活スタイルや寝食の時間も気にしないでいいので、ストレスがたまりません。仕事も辞めなくていいし、ひとり暮らしのように自分のペースを保った生活を送りつつ、困ったときは声をかけ合える。それも、決して過干渉にはならず、壁越しの会話で相手の存在を感じたりする程度です」(同)
確かに、従来の結婚には「1人の時間が奪われる」というイメージがあるのも事実。2012年6~7月に「マイナビ賃貸」が既婚者や同棲カップル500人を対象に行ったアンケートでは、「ひとり時間は欲しいですか?」との質問に対して8割以上が「はい」と答えている。
周囲にいる未婚の男女に話を聞いても、未婚の理由として「まだ自由でいたい」「お金を自分のために使いたい」「働き続けたい」「家庭に縛られたくない」などの声が多い。共生婚は、こうした不満を解消する新しい結婚のかたちともいえる。