ただし、夫婦がお互いの自由を担保できる一方で、共生婚にはデメリットがないわけでもない。その最たるものが、子どもの存在だ。恋愛感情を抱かず、性的関係も持たない以上、精子提供や人工授精などの方法をとらない限り、共生婚の夫婦に子どもができることはない。
「ただ、共生婚を選ぶ人は、もともと『セックスがあまり好きじゃない』とか『子どもはほしくない』という男女が多いんです。そういう人たちにとって、子どもができないのは、それほど大きな問題ではありません」(同)
共生婚や『逃げ恥』夫婦、さらに増加か
恋愛というプロセスを省いて「共同生活の延長線上としての結婚」が増えているのは、恋愛にいい思い出がなかったり、恋愛相手の干渉や束縛に疲れてしまったりする人が多いという事情もあるようだ。また、他人と一定の距離感を保たないと同居できないタイプの人もいる。
その点、恋愛感情がない結婚なら干渉し合うことがなく、自分のペースを崩さなくて済む。相手に期待しなければ、感情を乱して失敗することもない。
「もともと、共生婚を選択する人には仕事も家事も1人でなんでもできてしまう人が多いんです。自立しているからこそ、『1人でもいい』と結婚から遠のいていたタイプです。でも、そういう人たちが、東日本大震災などをきっかけに『やっぱり、1人でいるより誰かと一緒にいたほうが安心できるんじゃないか』『結婚すれば周囲の目を気にすることがなくなり、人生が落ち着くのではないか』と思うようになりました」(同)
つまり、恋愛するのは面倒だが、誰かとは一緒にいたい。そういう男女の思惑が合致したのが、共生婚などの新しいかたちの結婚なのだ。
「結婚に『絶対』は存在しません。一緒に生活する当人同士がよければそれでいいわけで、今後は共生婚が増えていく可能性も十分あります」(同)
もちろん、『逃げ恥』のみくりと平匡のように、互いのことを知らなかった男女が契約結婚というかたちで同居を始め、その後恋愛感情を持つようになるケースも出てくるだろう。
相手探しを含めて恋愛の難易度が高くなったことで、結婚のあり方も多様化しているわけだ。今後は、共生婚や『逃げ恥』のような夫婦がさらに増えていくのかもしれない。
(文=藤野ゆり/清談社)