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がん検診に変革をもたらす新技術!発見しにくいがんが血液検査で見つかる?

文=中村祐輔/シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センター副センター長
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がん検診に変革をもたらす新技術!発見しにくいがんが血液検査で見つかる時代にの画像1検診技術の標準化が必須(depositphotos.com)

プレシジョン医療(注1)には、当然ながら予防や早期発見も含まれる。肝炎ワクチンやパピローマワクチン(現在では、子宮頚がんだけでなく、頭頸部がんの予防につながると考えられている)など有効な手段だ。

 そして、個人ごとの遺伝的リスクに応じた、がん予防プログラムや検診プログラムの導入が必要だと思う。中韓では、すでに生命保険・医療保険企業と連携する形で、トータルヘルスケアシステムが開始されている。糖尿病など薬物治療ではなく、運動療法のアドバイスまで含めたサービスが提供されている。

検査の侵襲性では有力なリキッドバイプシー

 日本では、肺がん検診、胃がん検診、乳がん検診、子宮がん検診などが実施されているが、検診率は、まだまだ、満足のいくレベルではない。大腸がんなどを本格的にスクリーニングするには、X線検査や内視鏡が必要だが、大腸を空っぽにする前処置が結構大変だ。私も何度か経験があるが、何度もトイレに駆け込むのは大変だし、油断するとお漏らししてしまいそうだ。

 そこで可能性があるのがリキッドバイプシー(注2)だ。リキッドバイプシーの利用目的のひとつは、がんの早期発見だ。

 検査において重要な項目は、検査の侵襲性・感度・精度だが、リキッドバイオプシーは間違いなく、侵襲の程度は低い。しかし、理論的には、ステージ1・2のがんをすべて見つけることは難しい。大腸がんの場合、ステージ1・2でなんらかの異常が見つかるのは50~60%程度だ。しかし、異常が見つかれば、病変の存在する確率は高い。

 技術的かつ論理的な限界は、血液(血漿)中に含まれるDNAの量だ。一般的な検査としては、血液7~10ccで答えが出ないといけない。血漿から数十ng(1ngナノグラムは1グラムの10億分の1)が回収でき、そのうち5~10ngのDNAが利用されることが多いように思うが、この量は結構厳しい。

 1個の細胞に含まれるDNAは約6.6pg(pgピコグラムは1グラムの1兆分の1)であるので、6.6ngで1000細胞相当だ。ひとつの細胞には2ゲノムあるので、5~10ngだと2000ゲノム程度しかない。

 しかも、DNAの長さが短いので、遺伝子を増やす操作(増幅)する際にも効率が悪くなり、実際には1000分子相当分しか増幅できないことになる。検出率を上げようとすると、当然ながら量を多くしたほうがいいが、それに応じて手間もかかり、検査料金も高くなる。新しい技術の限界を知った上で技術を利用すればいいのだが、それができないのが問題だ。

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