「確かに、埼玉は“公立王国”だと思います。公立でありながら抜群の東京大学合格者数を誇る浦和高校など、『名門』と呼ばれるような学校も多い。周囲に受験組が少なければ私立受験という選択肢も浮かびにくくなり、受験や教育にかかる費用を抑えることができるでしょう」(同)
ただし、逆にいえば、それは子どもに私立受験をさせたいと考えたときにハードルが高くなるということでもある。町田氏も「周囲に受験組が少ないので情報も少なく、教育熱心な人にとって、埼玉は合わない可能性もあります」と語る。
大規模な「ショッピングモールがある」から「車がいらない」というのも的外れだ。実際、埼玉に住む筆者の周囲では車を所有していない人は少数派で、友人や知人の半数以上がマイカーを持っている。
「埼玉のどこに住むかにもよりますが、いくら都内へのアクセスがいいといっても、埼玉では少し駅から離れれば車がないと行動しにくいことが多い。15年の埼玉県民の軽自動車所有率は29.13%で、この割合は北海道民の30.8%と大差ありません。これを踏まえれば、埼玉で生活するのに『車がいらない』ということはなく、『車は必需品』というのが現実なのではないでしょうか」(同)
「埼玉なら貯蓄できる」は嘘?負債額は全国3位
さらにもうひとつ、件の投稿者が埼玉を推す理由として挙げているのが、「貯蓄ができる」ということだ。
もし本当に、住居費、教育費、車のローンや維持費をカットできるのであれば、東京に比べて貯蓄も余裕でできるかもしれない。ところが、町田氏によると、住環境のわりに埼玉県民の貯蓄額は高くないという。
「総務省の『全国消費実態調査(14年)』によると、都道府県別に見た2人以上の世帯の1世帯当たり貯蓄現在高の全国トップは東京の約1967万円で、2位が神奈川県の約1904万円、3位は福井県の約1856万円。首都圏では、東京、神奈川のほかに8位に千葉県がランクインしていますが、埼玉はトップ10にも入っていません。もちろん、埼玉は東京や神奈川に比べて平均年収が低いという事情もありますが、埼玉に住めば効率よく貯蓄ができるかというと、そうとは限らないわけです」(同)
また、同調査の負債額(2人以上の世帯の1世帯当たり負債現在高)の多い都道府県を見ると、全国トップが東京の約789万円で、2位が神奈川の約717万円、それに続く3位が埼玉の約618万円となっている。この負債額は、マンションや土地など住宅関係が大部分を占める。
つまり、埼玉は住居費こそ安いものの、データだけ見れば貯蓄額が高いわけではなく負債額が高い土地柄となっており、コスパがいいとはいえなさそうなのだ。