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「人類最古の祖先」を中国の海底で発見? 5億4千万年前の珍妙奇天烈な海洋生物

文=佐藤博
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あなたのルーツ(起源)はLUCA(全生物最終共通祖先)だ

 サッコリタスが人類の遠い祖先かもしれない--。このような衝撃的な新発見が次々と加速しているのは驚きだ。ここで、ちょっと意地悪な質問をしたい。

 もしも、「あなたは誰?(Who are you?)」と尋ねられたら、どう答えるだろう。おそらく「○○です。(My name is ○○.)」と答えるのではないか。では、「どこから来たの?(Where come from?)」ならどうか。「○○です。(I was born in ○○.)」と、出自(国籍や生誕地)を言うはずだ。

 つまり、あなたの出自を問えば、あなたという生物のルーツ(起源)を問うことになる。あなたという生物のルーツ(起源)を進化の系譜(生物分類系統樹)から書くと、こうなる。

 真核生物(ドメイン)→動物界(左右相称動物/後口動物(新口動物)上門/有羊膜類)→脊索動物門→脊椎動物亜門→哺乳綱→サル(霊長)目→ヒト科→ヒト属→ホモ・サピエンス(あなた)となる。

 ただし、真核生物の前に、真正細菌、古細菌の2つのドメイン(領域)がある。生物全体を、原核生物(真正細菌、古細菌)、真核生物の3つに大別するのが3ドメイン説。この説は、1990年に微生物者カール・リチャード・ウーズ氏が提唱した生物の分類体系だ。

 生物全体を原核生物(真正細菌、古細菌)、真核生物に分ける3ドメイン説の共通祖先は存在するのだろうか。それが、LUCA(全生物最終共通祖先/Last Universal Common Ancester)という生命像仮説だ。およそ46億年前に地球が生まれた。そのおよそ5億6000万年後の40~38億年前に生命が生まれた。その生命は単細胞細菌だったと推定される。

 生命の起源の論争は続いている。ひとつは、生命の起源は深海の熱水噴出孔や火口側面のような過酷な環境だったと考える。もうひとつは、チャールズ・ダーウィンが提唱した「暖かい小さな水溜り(warm little pond)」の穏やかな環境と考える。

 だが、生物の祖先は判然としない。なぜなら、真正細菌、古細菌、真核生物の3大ドメインの起源に共通点が見られないからだ。真正細菌と古細菌は最も古いドメインで、真核生物は、その後に発生した。古細菌は真正細菌と同じ有機体だが、真正細菌と異なる代謝機能がある。真核生物はすべての植物と動物を含んでいる。

 サッコリタスが人類の遠い祖先なら、サッコリタスがLUCAにつながる生命体かもしれないが、その分化の過程に多くのミッシング・リンクがあるはずだ。さらに今後、カンブリア紀に生息した海洋生物の個体や化石が発見され、そのアミノ酸、核酸塩基、糖の組成解析やゲノム解析ができれば、LUCAに遡り着く道筋が見えてくるかもしれない。

 LUCAに至るミッシング・リンクは見つかるのだろうか。LUCAの神秘のルーツを探るグレートジャーニーは、まだ続く。
(文=佐藤博)

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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