売る側はベネフィットだけを伝えたがる
長年、さまざまな研究が積み重ねられてきたクルクミンでさえ「白紙撤回」のような事態になる可能性があるのだ。いや、クルクミンに限らない。あらゆる機能性成分において、その効果や安全性の評価が覆される可能性はいくらでもある。私たちはこのことを念頭に置いて、情報を見る姿勢を持つことの大切さを理解するべきだ。
消費者に届く情報のほとんどは、マスコミを通じてである。マスコミはいつも新しい情報を求めている。従来の概念を変えるような、あるいは新しく登場する物事はネタになりやすいので、多少、誇張してでも面白く伝えたがる。
しかし、一般的にいえば、たいていの物事には「ベネフィット」と「リスク」が共存している。売る側は当然のこと、ベネフィットだけを伝えたがる。しかし、そこにはリスクも潜んでいる。健康食品は利用する人のカラダに直接影響を及ぼすものだから、リスクを知らずして口に入れることは賢明ではない。
ウコンが二日酔い予防に効くか効かないか。あるいはどの成分がよいのか悪いのか。
そのことを検証する前に「リスク情報は何か」「これまでに健康被害はあるのか」ということは、ネットでも検索できる。
また毎日飲むものなら品質だって確かなものでなければ困るわけで、「この商品は信頼してよいのか」「有効成分以外に何が含まれているのか」をチェックする心構えを持つことが、何より身を守るのではないだろうか。
(文=後藤典子)
後藤典子(ごとう・のりこ)
ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会理事長、農医連携ユニット理事。同志社大学文学部卒業後、編集プロダクションを経てジャーナリストに。政治・経済評論をテーマにした取材・執筆を主軸としてきたが、サプリメントの取材をきっかけに市場の歪んだ情報の蔓延に義憤を感じ、生活者のための公正中立な情報の必要性を痛感。2001年、NPO日本サプリメント協会を発足、中立な情報機関として活動を始める。書籍の発刊や、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど、マスメディアにおいて執筆・評論・コメントを行うとともに、生活者や企業を対象とした講演活動を通じて、ヘルス・プロモーションの啓発に努める。現在、農と医をつないで健康と食の問題を検証するプロジェクト「農医連携ユニット」に関わるとともに、「日本サプリメント協会」を通して生活者の健康リテラシーを向上させるための情報活動を行っている。