信頼関係=ラポール
もうひとつの暗示テクニックもついでにお伝えしておきます。人は自分の表面的なイメージと正反対のことを言われると、自分の心の中を見透かされたように思う、ということです。
「本当のあなたは~」と伝えていく手法です。「本当のあなたは、いい加減な人ではなく、とても真面目な人ですね」などと、表面のネガティブイメージと反対のことを伝えてあげるとよく効くのです。誰だって、自分のことは肯定的に思いたいですから、自分の内面をわしづかみにされたようにも思えるでしょう。「本当は真面目」という指摘で、「この人は自分の内面を見透かしている」などと都合よく解釈してしまいます。
すると、自分の内面をよく知る相手への信頼感が形成されるのです。これを「ラポール」と呼びます。医者と患者のような関係性が瞬時に築けるのです。赤の他人なのに、自分の内面の秘密を明かしてしまうのは、「ラポール」が形成されるからなのです。ラポールは「心的融和関係」「絶対的信頼性」などと訳されています。
占い師やスピリチュアルな人は、厳かなユニホームをまとい、神秘的な装いで振る舞うほどに視覚に映る「権威」がひときわ輝き、信用させてしまうということなのです。
ここで全面的に相手の言うことを信じるようになると、依存心が芽生えます。相手の言いなりでお金を巻き上げられてしまうので危険です。
バーナム効果は、よく雑誌などに掲載される「生まれ月」による占いコーナーを眺める時にも働いてしまいます。たとえば、自分の生まれ月の運勢に「対人関係に問題の起こりやすい時です。特に目上の人との関係は悪化しやすいので注意が必要です」などと書かれていると、「そういえば、昨日ミスをして課長を怒らせた」などと勝手に結びつけて考えてしまいます。
地球人口73億人を1月~12月まで12等分すると、1カ月当たり6億人が該当することになります。6億人の運勢の傾向が同じというのはまったくあり得ないことなのですが、自分のことを占われていると思ってしまいます。
「ラッキーな予告の占いは信じ、悪い予告は無視する」ことが、幸せに生きていくコツになります。
(文=神岡真司/ビジネス心理コンサルタント)